【横須賀】芸術家の視点から三浦を感じる「横須賀美術館」の収蔵コレクション

Release2025.10.01

Update2025.10.01

【横須賀】芸術家の視点から三浦を感じる「横須賀美術館」の収蔵コレクション

Release2025.10.01

Update2025.10.01

東京湾を臨み、観音崎公園の山林に囲まれた横須賀美術館。ここでは、明治期から現代に至るまでの日本近現代を中心とした、三浦半島にゆかりのある作家の作品や、地元の風土を感じられる作品を鑑賞できます。

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2025年現在で5,000点を超える収蔵品の中でも注目したいのが、美術館設立のきっかけとなった2名、朝井閑右衛門と谷内六郎のコレクションです。

そこで今回は芸術になじみのない方でも楽しく鑑賞できるよう、学芸員である工藤さんに作品の魅力と見どころを伺いました。

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こだわり気質の朝井閑右衛門が描く横須賀の風景

朝井閑右衛門(1901-1983)は、横須賀市田浦に居を構えていた洋画家です。厚塗りの迫力のある油彩画が印象的ですが、実は水墨画を手掛けるなど表現は幅広く、独自の世界を築いていました。朝井氏はいわゆる横須賀の風景や風俗よりも、アトリエ兼自宅から見える、一見なんでもない田浦駅周辺の電線風景を執拗に描いていたそうです。

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《電線風景(トンネル)》1952年頃

《電線風景(トンネル)》に描かれた電線は、実際の何倍も太く描かれています。空をのたうつ電線は厚塗りの画風と相まって、まるで生き物みたいにうごめいているように見えます。

朝井閑右衛門はコレクター気質で、自分の絵の意欲を掻き立てるようなものを集め、気に入ったものは繰り返し描いていたそうです。横須賀美術館では朝井氏が蒐集した陶磁器や人形も収蔵していて、折にふれて展示しているというので、作品と一緒に朝井閑右衛門を取り巻く世界も見ることができます。

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《栄誉人間と人形(A)》 1966年:まるで人間のように描かれた西洋人形。

「朝井閑右衛門は、高い塀で囲まれたアトリエにこもってコレクションに囲まれながら裸に近い姿で過ごし、外に用事があると誰よりもおしゃれに着飾るなど、気難しさと細かな気遣いができる繊細さを持ち合わせるような……少々複雑な性格だったようです(笑) そんな画家の人柄を想像してみると、芸術がより身近に感じられるかもしれません」

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谷内六郎の温かくもちょっぴり怖い日本の情景

横須賀美術館のある観音崎や鴨居によく訪れていたという谷内六郎(1921-1981)は、元々漫画家としてデビューしましたが、週刊誌『週刊新潮』の創刊時に表紙絵画家に抜擢され、長年描き続けました。身体が弱く、体調が悪くなっても週刊誌が滞りなく発刊できるように、何枚も作品を描き溜めていたというエピソードから、朝井氏とは違った生真面目さが伺えます。

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《霧をぬぐうワイパー》1969年9月27日号

谷内氏が描く、人々の琴線に触れるような、温かく、どこか懐かしい日本の原風景。しかし工藤さんいわく、「実はちょっと怖い」のだそうです。

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《横切る光》1968年7月13日号:灯台の光が指すその先には…? 暗闇の中にふと浮かび上がる人の姿とそれを見た少年の気持ちをぜひご想像ください。

「子どもの頃に感じた不気味さや、暗闇で想像した怖いものなど。豊かな感受性をもつ子どもならではの目線と心を忘れずに描かれていて、見ていてドキッとするような、可愛いだけではない不思議な情景を描いています。ご本人も、家の中で行列をなすアリをお子さんと一緒に眺めるなど純粋な心をお持ちだったようです」

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また、展示作品の横に展示されている「表紙の言葉」も必見です。これには制作当時の時代背景や、谷内六郎の気持ちが書かれているため、作品と併せて読むと当時の社会の息づかいを感じ取ることができます。

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訪れるたびに新たな発見をもたらす常設展へ

横須賀美術館に収蔵される両名の作品は常設的に紹介されています。工藤さんは今後もテーマや視点に工夫を凝らして、「人々が訪れるたびに何か新しい発見を得られる場を目指したい」と話します。

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かつてこの地に魅せられた芸術家たちの目線を通して景色を眺めてみると、また違った視点で三浦半島を楽しめるかもしれませんね。ぜひ新たな発見を楽しみに、横須賀美術館まで足を運んでみてください。

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取材日 2025/08/21

※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

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若林奮《Valleys(2nd stage)》 1989年制作/2006年設置:屋外には無料で楽しめる展示もあります。

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鈴木昭男《点 音》 2013年:山の広場にあるこのマークの上に立って耳を澄ませると、美術館が生み出す室外機の音、山林に吹く風の音、鳥の声など、目ではわからない「音の風景」を鑑賞できます。

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横須賀美術館裏手から観音崎公園へと続く散歩道。

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美術館の前には東京湾が広がります。鑑賞後には海散策も。

Writer小林有希

東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。

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