三浦半島の畑に冬の冷たい風が吹き抜ける早朝、大根の収穫の最盛期を迎えています。1日2000本もの大根を土から引き抜く力強い手作業、そして白さを磨き上げる丁寧な洗浄工程に密着しました。
三浦半島の畑に冬の冷たい風が吹き抜ける早朝、大根の収穫の最盛期を迎えています。1日2000本もの大根を土から引き抜く力強い手作業、そして白さを磨き上げる丁寧な洗浄工程に密着しました。
加藤農園の畑では、冬の冷たい空気の中でも大根がすくすくと育ち、8月末の種まきから迎えた今がまさに収穫の最盛期を迎えています。
畑の葉は大きく広がり、どの株も堂々と地面を押し上げています。
葉をかき分けると、土の中に白い大根の肩がのぞき、出番を今か今かと待っているようです。葉元をそっとつかんで引くと、「ポッ」と音がするように、きれいに抜けていきます。
ここまで、たどり着くまでの時間は、約3か月。
種をまき、水やりに加え、葉の状態を確かめ、一日の天気を読むという、地道な作業の積み重ねです。
収穫を終えると、すぐに葉を短く整える作業へ移ります。大根をまとめて揃えて、すっと切る。
簡単そうに見えますが、美しく仕上げるには熟練した感覚が必要です。
午前中だけで、およそ2000本を収穫します。一本一本に目を配りながら、手はほとんど止まりません。
加藤農園の“当たり前の朝”には、張りつめたほどの集中が宿っています。
畑から抜いたばかりの大根は、1本あたり1〜2kg、時にはそれ以上。
それを毎日、数千本単位で収穫する農家にとって、すべてを手洗いするのは現実的ではありません。そこで専用の大根洗浄機が活躍します。
機械の内部にはロール状のブラシがずらりと並び、高速回転しながら大根をゆっくりと送り出します。同時に噴射される水が泥をやさしく洗い流し、表面を傷つけることなく、細かな“ヒゲ根”までほどよく取り除いてくれる仕組みです。
洗浄を終えた大根は、まるで磨き上げた陶器のようにつるんとした肌ざわりに。ここからが、農家の“目”の出番です。
機械を通った後でも、大根は必ず1本ずつ手に取り、状態を丁寧にチェック。形・重さ・表面のきれいさを確かめながら、規格に合わせて積み上げていきます。少し曲がっているものや、皮に小さな斑点があるものは、味にはまったく問題がありません。むしろ、自然の中でのびのび育った証でもあります。しかし市場の基準に照らすと“規格外”となり、一般の流通には乗せられません。
だからこそ、ひとつひとつをしっかり見つめる目が必要。洗うという工程には、ただ泥を落とす以上の「品質への誠実さ」が込められています。
「手に取った人が、気持ちよく料理できるように」
洗浄機で大まかな泥を落としたあとも、加藤農園の作業は終わりません。細い根のくぼみに入り込んだ泥までは、機械だけでは落としきれないことがあります。そこで仕上げとして、高圧の水流で細部までしっかり洗い上げる工程を行います。
泥がすっきりと落ちていくたび、真っ白な肌がさらに輝きを増していきます。料理をする人の手元に届くその瞬間まで、加藤農園の“誠実な手しごと”は続いています。午前中には収穫と洗浄を行い、午後には段ボール箱に丁寧に詰めて農協に出荷します。
三浦市・初声で加藤農園を家族で営む加藤正人さんは、夏はスイカやメロン、冬は大根・キャベツなど、年間100品種以上を育てています。10月の台風で、大切に育ててきた大根が倒れてしまったこともありました。それでも翌朝には畑へ足を運び、前を向く。
「毎日の食卓に並ぶ野菜だからこそ、安心して使ってほしい」
その思いが、畑に立つ背中を静かに支えています。
畑しごとは毎日が真剣勝負。
大根がいちばん美味しく育った“その瞬間”を見極めて、収穫のタイミングを決めています。収穫は、立ち上がったり、しゃがんだりをひたすら繰り返す重労働。腰にも腕にも負担がかかりますが、それでも加藤農園が手を止めることはありません。そこにはいつも、「おいしい大根を届けたい」という揺るぎない願いがあります
収穫したての大根を切れば、包丁のあとから透明な水分がじゅわっとあふれます。
すりおろせば、驚くほど甘く、透き通るような味わいが広がり、そのひと口には、畑を吹き抜ける風ややわらかな光まで感じられるようです。
なかでも農家さんがすすめる“一番おいしい食べ方”は、やっぱりシンプルな大根おろし。
旨みと甘み、そして三浦の大地の恵みを、育てた人の顔を思い浮かべながら楽しんでみてください。加藤農園の大根は、農協からの出荷のほか、ヨークマート久里浜店、直売所 「須軽谷の里」でも購入できます。
日々丁寧に育てられた一本の美味しさを、ぜひ食卓で味わってください。
取材日 2025/11/19
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

Writerうみのとなり
ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

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