【三浦】加藤農園の種まきから密着!台風・豪雨を乗り越えて育つ、大根の芽に込めた想い

Release2025.10.10

Update2025.10.10

【三浦】加藤農園の種まきから密着!台風・豪雨を乗り越えて育つ、大根の芽に込めた想い

Release2025.10.10

Update2025.10.10

8月の終わり、夏から秋へと季節が移り変わる“端境期(はざかいき)”。加藤農園では、一面に広がっていたスイカ畑がすっかり片付けられ、冬が旬の大根の種まきが行われました。

大根の芽が出始めています

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大根の種を植えて、2週間。発芽した芽が大きくなり、子葉(しよう)が開き、本葉が出始めています。

まだ大根本来の葉ではなく、成長に必要な養分を蓄える役割を担っています。

その後、子葉の間に、ギザギザとした大根特有の形をした本葉(ほんば)が顔を出します。この本葉が成長していくことで、大根の形に育っていきます。

実は、取材の数日前には、台風の影響で豪雨に見舞われました。

種が流されてしまったのではないかと心配しましたが、無事に成長していて一安心です。

スイカ畑が次のステージへ

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真夏の太陽の下、甘い香りを放っていたスイカ畑。収穫を終えた畑は、次の作物のための準備に入ります。

まず残ったツルを片付け、トラクターで土を耕していきます。肥料を丁寧に混ぜ込み、次に植える作物が元気に育つための土壌を整えます。

準備が整った畑に、エンジン付きの「溝切り機」で、まっすぐな溝を掘っていきます。

『おっぺす』という、この三浦半島で代々使われている『押す』を意味する方言で、重い機械をゆっくりと前へ進めます。

いよいよ種まき!ハイテクな「シーダーテープ」

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いよいよ種まきです。使うのは「種まきマシン」と呼ばれる手押しの機械です。この機械には「シーダーテープ」というロールがセットされています。

シーダーテープとは、水に溶ける素材でできたテープに種が均等な間隔で埋め込まれているという優れもの。この機械を押して歩くだけで、テープが畑に埋められ、一定の深さに種がまかれていく仕組みです。

しかし、その作業は見た目以上に重労働。

乾いた土は、まるで砂浜の上を歩くようです。まっすぐ進むだけでも、かなりの体力が求められます。

では、雨が降れば良いかというと、そう単純ではありません。

雨が降りすぎると畑は「ふんごむ」と呼ばれるぬかるみ状態になり、足が埋まって抜け出せなくなるほど。

「雨が降らないのも、降りすぎるのも困る」

自然と対話しながら、最適なタイミングを見極めること。これこそが、農家の知恵と経験が試される瞬間です。

約3000リットルもの水をゆっくり染み込ませる

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種まきが終わると、寒冷紗(かんれいしゃ)という植物を保護するための布を張り、その上から、水やりを行います。畑を2枚分まくのに約3000リットルの水を使います。1列ずつ丁寧に確実に、土に浸透するようにゆっくり流し込んでいきます。

日中に水やりをすると、水が蒸発してスチームのようになり、作物を傷める可能性があるため、真夜中や早朝3時〜4時に行うこともあるそうです。

「できれば1週間に1度は雨が降ってほしいですね」

年間100品種以上を作る「加藤農園」

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三浦市初声で「加藤農園」を営む加藤正人さんは、家業の農業に本格的に取り組んで10年になります。夏はスイカやメロン、冬は大根やキャベツなど、年間100品種以上の多様な作物を育てています。

この日も、早朝から両親と三人で広大な畑の作業を始めました。

農業の難しさと喜び

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「実は、昨年の大根は全滅でした」

昨年も同じように育てましたが、大根の形が潰れたようになってしまい、畑の作物がほとんど出荷できなくなるという事態に。

「結局、全てを処分するしかなかった」

皮をむけば食べられるものの、見た目が悪いと売り物にはなりません。

日当たりや水はけ、その年の気候との相性など、様々な要因が考えられますが、原因特定が難しいとのこと。

農家さんたちは毎年、「この品種は病気に弱い」「こっちは形が揃う」といった情報を交換しながら、手探りでその年の最適解を探しています。

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「不思議なことに、水やりなどを丁寧にやった年に限って、野菜の値段は安くなる傾向にあります。」

天候に恵まれず、苦労して丁寧に作物を育てた年は、結果的に農家全体の出荷量が増え、市場価格が下がってしまう「豊作貧乏」に陥ることも。

手間暇をかければ、それだけ収入が増えるわけではないのが農業の厳しい現実です。

自然という大きな存在と向き合い、昨日の経験に今日の知識を加えながら、新しい一年を始めます。そこには、予測できない困難もあるけれど、種から芽が出たときの安堵や、作物が大きく育っていく喜び、そして何より、育てた野菜を「おいしい」と食べてくれる人々の笑顔があります。

今年の1回目は「夏の民」と「福誉」という品種の種を蒔きました。

肉質がしっかりしていて、辛みや苦味が少ないのが特徴です。時期をずらし、違う品種の種をまき、シーズン通して5~6種類前後の大根を作っています。ただひたすら、「おいしいを届けたい」という想いを胸に、今日も太陽の下、野菜と向き合っています。

(※野菜の直接の個人販売は行っておりません。「ヨークマート久里浜店」もしくは「野菜の里 須軽谷」にてお買い求め下さい)

取材日 2025/8/28

※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

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スイカ畑には、強い日差しで焼けてしまったスイカが転がっています。片付けは大変ですが、大事な作業です。

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青い部分が種です。株間・粒数をカスタムオーダーします。

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畑の周辺の地下水を汲み上げるスポットで水を汲みます。

Writerうみのとなり

ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

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