パンの香りに惹かれてお店に入ると、耳に飛び込むのは、店内に流れる音楽。訪れる日により、R&BだったりRAPだったりと、いろんな音に出会えます。そして、背が低い棚にずらりと並ぶパンのすぐ先で、店員さんたちがパン作りをする様子を見ることが出来ます。パンが並べられているだけでなく、働く人たちの動きややりとりも含めて、ライブ感あふれるお店です。
そんな感想を伝えると、元DJの店主・蔭山充洋さんは「このお店はスタッフたちも含めた“存在としてのバンド”だと思って見るんです」と語ります。そう、蔭山さんにとって、このお店はDJやバンドメンバー、さまざまな出会いを詰め込んだ、これまでの人生の集大成であり、ライブ会場のような存在なのです。
「パンを作っているのをお客さんが見て、パンを選んで、食べてというのは、ライブに近いと僕は思っていて。このお店やパンは、僕が表現したいことのひとつなんです」。
パンひとつとっても、曲の構成のように、盛り上がる場所を考えるという蔭山さん。創業当時からある定番メニュー「全粒粉あんぱん」は、「充麦」にとっては原点的な存在です。どのような位置づけかたずねると、「僕の中では、1stアルバムに入ってそうな感じ」と音楽的な表現で説明してくれます。
生地のベースになっているのは自分たちで栽培した小麦。あんぱんには珍しいハードな生地感です。中には、地元のあん作り工房・湘南製餡さんの餡がぎっしり詰まっています。
「うちの小麦ってこういうハード系が合うんですね。柔らかくなるように作ると、穀物特有のえぐみが出て、おいしくないんですよ。もしかしたら柔らかくした方が売れるのかもしれないけど、僕にとっておいしいのはこっちだから」。
蔭山さんは、素材を組み合わせるときは「不協和音が入らないように気をつけている」と言います。小麦と餡の心地よいアンサンブルを感じる「全粒粉あんぱん」は240円です。
取材日 2024/09/09
Information
三浦パン屋 充麦
住所 神奈川県三浦市初声町入江54-2
電話番号 046-854-5532
営業時間などの情報 木曜日、土曜日、日曜日7:00~16:00/月曜日、金曜日は8:00~16:00
定休日 火曜・水曜 ※小麦種まき、収穫時は不定休
アクセス 三崎口駅から荒崎行き京急バス「矢作入口」下車徒歩2分
URL https://shop.miuramitsumugi.jp
Writerミノシマタカコ
フリーライター/Web編集。旅行や食、ホテル、ライトテック、ビジネスなど多岐にわたる分野を執筆。インタビュー多め。狛犬愛好家としても活動中。日本参道狛犬研究会会員。
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