【三浦海岸】時間と空間の余白を愛でる。月に1週間だけ開く幻の古本屋「汀線」

Release2026.03.02

Update2026.03.02

【三浦海岸】時間と空間の余白を愛でる。月に1週間だけ開く幻の古本屋「汀線」

Release2026.03.02

Update2026.03.02

三浦海岸線から国道134号線を内陸側へ。住宅と畑が入り混じる静かな道を進んだ先に、幻の古本屋「汀線(ていせん)」があります。“幻”と呼ばれるゆえんは、月に1週間程度しか開かない開業スタイルにあります。

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普段はオンラインショップや関東近郊のイベントへ本を届けていますが、古い平屋の扉を開くと、そこには本と人が交差する、やさしい時間が流れています。

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店主の村山敏朗さんは、北海道出身。京都で学生時代を過ごし、都内でいくつかの仕事を経て、子育てのために三浦市へ移住。「三浦に古本屋が欲しい」という自身にとっての必要性が原動力となり、開業に至りました。

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平屋に残る“痕跡”がつくる、唯一無二の空間

店舗は8畳と4畳半ほどの小さな平屋です。三浦で知り合った「壁紙屋good day house」の尼野克明さんの紹介で出会った空き家は村山さん自ら改修したといいます。

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「古本屋だからというわけではありませんが、家屋の歴史が感じられる“痕跡”を面白がりたいなと思いました。元の壁の色をロゴに生かしたり、落書きの跡などをあえて残したり。手持ちのものを組み合わせてつくる、ブリコラージュ(※)的な空間の在り方が好きですね」

※ブリコラージュ:ジャンク・アート、コラージュ、アッサンブラージュなど、その場にあるものを素材にして、作品を構成してゆく手法を指す。

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内装は整え過ぎず、こだわり過ぎず。“余白”さえ感じられるような空間は「おしゃれなのか野暮ったいのか判断がつかない”面白い空間”が理想」と村山さんは話します。

日常の延長に。おばあちゃんが教えてくれた“本の在り方”

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棚にはジャンル別に本が並んでいます。入口付近には多くの人が興味を寄せそうな漫画や音楽、エンタメなどの本を。そしてお店の奥に向かうにつれて、アート、文芸、人文と、世界が深まっていくように、本を配置しているようです。

「できるだけ様々な本を取り扱いたいと思っていますが、限られた空間の中では、自分の興味関心の強い分野が多めにはなっています」

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お店を訪れるのは地元の方が中心で、女性や若い方も多く来店されるのだとか。そんな中、村山さんの心に強く残ったのは、「まるで野菜を選ぶように、本を購入された」ご近所のおばあちゃんの姿だそうです。

「バスや病院の待ち時間に読む本を探していたそうです。良い意味で本の選び方にこだわりがない、その“自然さ”が忘れられません」

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SNSや電子書籍が普及し、都心を中心に“体験”を重視した本屋が増えている昨今、本屋への来店はハレの日のイベントごとであり、本は特別な存在になりました。期間限定で開業する「汀線」も、訪れる人に展示空間のような“特別感”を持ち合わせています。

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「言い方が難しいですが、“ちょっとした暇つぶし”のために本を手に取ることが少なくなってしまった今、あのおばあちゃんの姿は印象的でした」と村山さんは話します。

三浦で古本屋を続けるための、現実的で心地よい選択

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営業時には、通りに画像の看板が置かれます。

公共機関からも離れた土地でなぜ古本屋を?

そんな素朴な疑問に、村山さんが答えてくれました。

三浦で古本屋を営むために村山さんは敢えて、駅近で毎日開業するのではなく、家賃を抑えられる場所で開業日を絞るスタイルを選んだのです。そしてオンライン販売や催事出店をメインで回すことで、持続可能な働き方を模索しています。

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「本来なら人が集まりやすい土日営業が望ましいのですが……。元々子育てのために三浦に移住したので、土日は小さい子どもとの時間を大切にしたい。現状は、この場所とこのやり方を気に入っています」

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限定的かつ不定期の開業にもかかわらず、通ってくれるお客さんには「感謝しかありません」と村山さんは頭を下げます。

「偶然の出会いではあったものの、この三崎でもなく三浦海岸とも言えない、”どこにも属していない地帯”で古本屋を営むことに面白みを感じています」

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昼どきには地域の放送がゆるやかに響く、この静かな土地で。空間と時間の余白を味わいながら、本とじっくり向き合ってみませんか。

取材日 2025/11/25

※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

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灯れば、オープンの合図。

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ロゴの斜線のブルーグリーンは、残っていた壁から採色したそうです。

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空間をアクセントづける、カラフルな板敷きも。

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三浦市や近隣地域の書籍を集めた一角。「なかなか三浦市関連のものは少ないですね」と村山さん。

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三浦半島関連の本で村山さんのおすすめはZINE「漁民の芸術」(サンズイ舎)。「日常で使用していた様々な民具を通して、三浦半島とその漁民文化を紹介した1冊。写真が美しく、つい読みふけってしまいます」

Writer小林有希

東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。

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