【横須賀】築110年の蔵が甦る。味噌工房「幸保六兵衛」が伝える“天然醸造”の味

Release2025.11.04

Update2025.11.04

【横須賀】築110年の蔵が甦る。味噌工房「幸保六兵衛」が伝える“天然醸造”の味

Release2025.11.04

Update2025.11.04

潮の香りが届く浦賀の町で、築110年の石蔵が再び“発酵の香り”に包まれています。

「みそ工房 幸保六兵衛」は、国登録有形文化財の蔵を再生し、天然醸造の味噌や甘酒を手づくりで仕込む味噌工房。

専業主婦から味噌職人へと転身した幸保節子さんが、地域の記憶と人のつながりを大切に、“手しごとの優しさ”を未来へと紡いでいます。

110年の蔵で育まれる「浦賀ペルリみそ」

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「幸保六兵衛」の看板商品は、ユニークな名前の「浦賀ペルリみそ」です。

ペリー来航の地として知られる浦賀の歴史にちなんで名付けられました。

アメリカ産ひよこ豆のやわらかな甘みと、国産米麹の自然な甘さが調和した、まろやかで奥行きのある味わいです。

たっぷりの米麹を使用し、塩分を控えめに仕上げているため、味噌汁はもちろん、野菜にそのままつけても美味しい“もろみ風”の味噌です。

ペルリ味噌と並ぶ人気商品が、「横須賀トモダチみそ」。

ひよこ豆と米麹に大麦麹の香ばしさが加わり、奥深い甘みが感じられる一品です。

どちらも300g(400円)、650g(800円)と家庭サイズで販売しています。

そのほか、米みそやあわせみそ、麦みそも販売中。どれも素材を厳選して丁寧に仕込んでいます。

石蔵の中でじっくり天然熟成させる

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「幸保六兵衛」では、約110年の歴史を持つ石蔵内に醸造室を設置。「空気の循環」を行いながら、自然の温度変化だけを利用してじっくり天然熟成させています。加熱殺菌をしていない生みそです。

味噌づくりは最低でも60日間の発酵期間が必要。

冬の仕込みが定番ですが、夏の高温期には塩分量を丁寧に調整しながら発酵を見守ります。一度に仕込めるのは24樽(約420kg)ほど。まさに“一樽一樽に心を込めて”の手仕事です。

砂糖不使用の優しい甘さ「自家製甘酒」400円

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やさしい甘さで人気の甘酒も、すべて手づくり。

炊飯器でじっくり5時間かけて仕上げる、米麹とご飯だけの甘酒は、砂糖を使わず自然のやさしい甘みです。

冬は生姜を添えたホット甘酒が人気です。夏は豆乳やソーダで割るなど、季節に合わせたアレンジも楽しめます。

店内でいただけるほか、テイクアウトも可能です。

100年以上の歴史を持つ国登録有形文化財「幸保家主屋・石蔵」

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天然石造醸造 みそ工房「幸保六兵衛 」は京急線浦賀駅から徒歩13分の浦賀の街並みにあります。

「幸保六兵衛(こうほろくべえ)」の建物は、大正12年(1923年)の関東大震災直後に再建された、約100年の歴史をもつ木造の建物と石蔵です。

現在は「幸保家主屋・石蔵」として、国の登録有形文化財にも認定されています。

幸保家の敷地には、木造2階建ての主屋と、木骨石造2階建ての石蔵という2棟が並び、どちらも往時の趣を色濃く残しています。

幸保家の歴史は江戸時代にまで遡ります。

享保15(1730)年、初代・幸保六兵衛が干鰯(ほしか)問屋の株を取得し、東浦賀で商いを始めました。明治期に入ると、幸保家は米穀商へと商売を転換。

以来、地域に根ざした米屋として、平成の時代まで店を構えてきました。

土地に息づく「商いの心」と「手しごとの精神」を受け継いで

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この建物を受け継いだのが、店主の幸保節子さんです。夫が相続したのをきっかけに、「この建物を残したい」という想いから事業をスタートしました。

専業主婦として17年間家庭を支えてきた節子さんですが、実は10年ほど前から趣味で味噌を仕込んでいたそう。

「せっかくなら、自分の手でこの蔵を息づかせたい」

その一心で商工会議所に相談し、創業セミナーにも参加。

片付けと改修に2年をかけ、2025年6月25日、ついに「幸保六兵衛」が誕生しました。

人と歴史をつなぐ、味噌づくり

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節子さんは一人で仕込みから販売までをこなす日々です。

一度に仕込む量(約420kg)には限りがあります。そのため、大量生産はできませんが、手作りで品質管理された美味しい味噌をお客様に提供したいと話します。

節子さんが大切にしているのは、長い年月を経て受け継がれてきたこの建物を大切に守りながら、お客様や地域とのつながりを育てていきたいという想いです。

「味噌をきっかけに、人が集い、会話が生まれる場所にしたい」

そんな願いを込めて、節子さんは今日もひと樽ひと樽に心を込めています。

時間をかけて熟成される味噌のように、

人の手で紡がれるものには、言葉では言い表せない深いぬくもりがあります。

「幸保六兵衛」の味噌と甘酒は、そんな“手しごとの優しさ”そのもの。

忙しい日々の食卓に、少しだけ穏やかな時間を添えてくれます。

「味噌づくりの楽しさを伝えたい」と少人数制の味噌教室も企画しています。

1.2kgコース(3,300円)と3kgコース(4,400円)があり、4名までの小さな教室を開いています。

取材日 2025/8/27

※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

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石蔵は粗い石壁と太い木材の骨組みで構成され、歴史を感じる素朴で頑丈な造りです。

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店内には、「浦賀米商組合」の看板が飾られ、趣きを感じます。

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母家の2階は町屋事業としてスペースを活用予定です。

Writerうみのとなり

ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

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