【三浦】一度食べたら他のナスには戻れない 須原農園こだわりの「実生ナス」とは?

Release2025.09.01

Update2025.09.01

【三浦】一度食べたら他のナスには戻れない 須原農園こだわりの「実生ナス」とは?

Release2025.09.01

Update2025.09.01

三浦海岸駅から徒歩5分。のどかな畑の一角に、夏になると艶やかに実る“とろけるナス”があります。「一度食べたら、もう他のナスには戻れない」—そう話すのは、400年続く農家「マルニ須原農園」の16代目・須原庄一さん。

化学肥料を使わず、自家製の堆肥と“自根栽培”にこだわって育てられた「実生ナス」は、毎年7月から9月にかけて、直売所と市場で多くのファンの元へ届けられています。

その美味しさの裏側には、三浦の風土と、手間を惜しまぬ情熱がありました。

味を追求した品種選び

もっと見る

「ナスはね、このサイズが食べごろなんですよ。」

そう話すのは、三浦半島の風土を知り尽くした農園主・須原さん。須原農園で栽培されているのは「千両ナス」という品種。

数ある品種の中から辿り着いたのが、このやわらかな果肉と甘みを兼ね備えた逸品です。

「うちのナスを食べたら、他のナスには戻れない」と須原さんが笑う姿には、誇りと確信がにじんでいます。

朝露が残るうちから、毎日収穫作業を行います。ナスは一晩で大きく姿を変えるため、その一瞬を逃さず収穫するのは、熟練の目利きにかかっています。

最盛期の9月には、一日に200キロものナスが手際よく摘まれていきます。ナスの生育を促すための重要な剪定も同時に行います。

風土に寄り添う栽培スタイル

もっと見る

約20アールの畑に並ぶ、約450本のナス。5月下旬に植えた苗は、夏の陽射しを浴びながら、2メートル近くまでぐんぐんと伸びていきます。

実は、ナスは水を好み、風には弱いデリケートな作物のため、三浦半島の強風はナスにとっては過酷な環境です。

しかし、須原農園の畑はすり鉢状の地形になっているので、風を遮り、水分を保ちやすくしてくれるのです。

この“風の陰”の恩恵が、ナスの生育に良い影響を与えています。

“美味しさ”を信条に手をかけて育てる

もっと見る

「効率より、味を選びたい」という須原さんは“自根栽培”という手間のかかる方法を採用しています。

化学肥料に頼らず、米ぬかなどを配合したオリジナルの堆肥を1年かけて熟成させたものを混ぜています。

「この畑の、この土と栽培方法が最高の味を作ってくれる」

自根栽培で育てたナスは「実生ナス」と呼ばれ、一口で違いがわかる美味しさです。

漁師の血を受け継ぐ“土の匠”

もっと見る

三浦海岸で農業を営む、マルニ須原農園は、農園主・須原庄一さん、妻 美乃里さん、娘 紫苑さんの家族経営です。

約400年前、初代・仁左衛門さんがイワシを追いかけて三浦の地に来て住み着き、3代前までは「網元」でした。

農家出身の祖父が家督を継ぐことになり、漁業から農業に転換しました。

庄一さんは16代目として、須原家を守り続けています。

将来の三浦の農業のために

もっと見る

「ナスを始めて5年。最初の3年はモノにならなかった」と苦労も話します。

夏はメロン・スイカを中心に、冬は大根をメインに栽培するなかで、できるだけ多品種を栽培したいと、様々な作物に挑戦しています。5年前から、三浦では珍しい玉ねぎの栽培を始めました。

「三浦の農業は、高齢化や後継者不足が進み、このままでは10年後には今の農業を続けていくのが難しくなるかもしれません。だからこそ、時代に合った新しい流通の形を模索する必要があります」

そんな中でも、須原農園が大切にしているのは、「おいしい」という価値を次の世代につなげていくこと。さらにSNSを活用した情報発信にも力を入れ、新しい農業のスタイルで野菜のおいしさを伝えています。

須原農園のナスが市場に並ぶのは、夏から秋にかけての約3カ月。

7月に始まり、9月にピークを迎える収穫期は、まさに味わいの最高潮。太陽の光をたっぷり浴び、朝露とともに摘まれるナスは、皮は艶やかに、果肉はしっとりと甘く旨味たっぷり。

市場への出荷に加えて、直売所でも購入可能。産地ならではの鮮度と風味を、ぜひ味わってみてください。

取材日 2025/7/31

※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

もっと見る

珍しい白ナスも栽培。とろける食感が魅力です。

もっと見る

直売所には新鮮な野菜が格安で並びます。ご近所の方はもちろん、飲食店の仕入れに訪れる人も。

もっと見る

須原農園直売所の看板ヤギの「うーちゃん」は人懐っこくて大人気。

Writerうみのとなり

ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

関連記事

RECOMMEND

【三浦】ヤギに会える直売所「マルニ須原農園」絶品ナスのこだわりと農家レシピ

2025.09.08

【三浦】ヤギに会える直売所「マルニ須原農園」絶品ナスのこだわりと農家レシピ

【三浦】1日1000個完売!伊藤農園のとろ甘完熟かぼちゃがすごい理由

2025.07.07

【三浦】1日1000個完売!伊藤農園のとろ甘完熟かぼちゃがすごい理由

【三浦】たった数時間が美味しさの勝負!400年続く農家が育てる伊藤農園の極上かぼちゃ

2025.07.01

【三浦】たった数時間が美味しさの勝負!400年続く農家が育てる伊藤農園の極上かぼちゃ

【三浦】鎌倉時代から続く「高梨農園」の紫芋シェイクとレモンジャム

2025.05.28

【三浦】鎌倉時代から続く「高梨農園」の紫芋シェイクとレモンジャム

【三浦】花菖蒲園跡を再生─ザ・作兵衛フルーツガーデンの50品種ブルーベリーと40年のみかん園

2025.11.17

【三浦】花菖蒲園跡を再生─ザ・作兵衛フルーツガーデンの50品種ブルーベリーと40年のみかん園

【三浦】甘くて濃い“まるでジュース”な極上みかん狩り「ザ・作兵衛フルーツガーデン石井みかん園」

2025.10.18

【三浦】甘くて濃い“まるでジュース”な極上みかん狩り「ザ・作兵衛フルーツガーデン石井みかん園」

人気記事

RANKING

No.1

横須賀で本格北海道ジンギスカン!?分厚いラム肉と特注鍋の「行くべぇ」

2025.11.24

横須賀で本格北海道ジンギスカン!?分厚いラム肉と特注鍋の「行くべぇ」

No.2

【横須賀】創業105年「和心 天まる」で味わう最高の鰻とかき揚げ重ランチ

2025.11.29

【横須賀】創業105年「和心 天まる」で味わう最高の鰻とかき揚げ重ランチ

No.3

【横須賀】“煮干し×水×塩”だけ!行列のできる「煮干しそば平八」の濃厚スープに感動

2025.11.26

【横須賀】“煮干し×水×塩”だけ!行列のできる「煮干しそば平八」の濃厚スープに感動

No.4

【横須賀】47歳で脱サラ漁師に!「直丸」門脇さんが挑む“命懸けの素潜り”と親子の絆

2025.11.28

【横須賀】47歳で脱サラ漁師に!「直丸」門脇さんが挑む“命懸けの素潜り”と親子の絆

No.5

【横須賀】​​まるで地中海!バイク愛あふれる絶景カフェCafe PILOTA MOTOのアラビアータ

2025.11.24

【横須賀】​​まるで地中海!バイク愛あふれる絶景カフェCafe PILOTA MOTOのアラビアータ

No.6

【逗子】開店2時間で完売!行列必至「鬼助ベニエ」の揚げたてモチふわドーナツ

2025.11.23

【逗子】開店2時間で完売!行列必至「鬼助ベニエ」の揚げたてモチふわドーナツ

No.7

【逗子】小坪直送の魚×絶品パスタ。「ricco」の海を感じるランチコース

2025.11.25

【逗子】小坪直送の魚×絶品パスタ。「ricco」の海を感じるランチコース

No.8

【横須賀】外はカリッ、中はとろける最高の食感。絶品「究極の厚揚げ」池嶋とうふ店

2025.11.24

【横須賀】外はカリッ、中はとろける最高の食感。絶品「究極の厚揚げ」池嶋とうふ店

No.9

【北久里浜】20品目×豚肉×発酵の健康定食!「ブタノキモチ」のブタジンジャー定食

2025.11.27

【北久里浜】20品目×豚肉×発酵の健康定食!「ブタノキモチ」のブタジンジャー定食

No.10

【三浦】とんかつ店で季節のフルーツタルト?ロクベイの“甘くて贅沢”なカフェ時間

2025.11.24

【三浦】とんかつ店で季節のフルーツタルト?ロクベイの“甘くて贅沢”なカフェ時間