観賞魚として身近な金魚。お祭りの「金魚すくい」でもお馴染みですが、その起源は突然変異で生まれた赤いフナと言われています。室町時代に中国から日本に伝来し、江戸時代には庶民の間で大流行したのだとか。
観賞魚として身近な金魚。お祭りの「金魚すくい」でもお馴染みですが、その起源は突然変異で生まれた赤いフナと言われています。室町時代に中国から日本に伝来し、江戸時代には庶民の間で大流行したのだとか。
そんな金魚に魅了された愛好家たちが、全国から足を運ぶお店が横須賀にあるのをご存じですか。京急「逸見駅」からすぐの金魚・錦鯉専門店「KIICHI」では、美しく、そしてなによりも“元気な”金魚たちに出会えると注目が集まっています。
「元気な金魚は、人を見ると近づいてくるんですよ。ほら、餌をもらえると思って口をパクパクさせるでしょう」
そう教えてくれたのは、オーナーの青柳裕一さん。かつて国産車ディーラーの店長として働いていましたが、顧客(後に裕一さんの師匠となる方)から譲り受けた20cm級の金魚や錦鯉の稚魚をきっかけに、観賞魚の世界へ。
店内には、大きな水槽を悠々と泳ぐ、彩り豊かな金魚たち。驚いたことに、錦鯉と金魚が一緒に泳ぐ水槽もありました。青柳さんの丁寧な管理のもと、どの魚も活発で、美しいハリツヤです。
中でもおすすめは、KIICHI独自に交配して生まれた和金。細長い胴体にフナと同じ尾ひれが特徴の魚種ですが、お店で生まれた金魚はよりシャープで凛とした顔立ちをしているのだとか。
「錦鯉のような金魚を再現したかったんですよ。スペースがないと飼えない錦鯉よりも、金魚ならどなたでも家庭で飼育できるので。赤と黒が映える『緋写り』や、三色の『昭和三色』のように墨の入りが美しい色柄が好きで……この2匹は特に美しく色が出ました。」
青柳さんの原点は、田んぼでザリガニやカエルを捕まえて過ごした少年期にあります。金魚、メダカ、熱帯魚、インコや犬……家にはいつも生き物がいました。さらに、動物研究家・ムツゴロウさんに憧れ、お年玉を貯めて北海道にある「ムツゴロウ王国」を訪ねたというエピソードも。
「でも、飼育はうまくいかないことばかり。なぜ自分はうまく育てられないのか、ずっと悩んでいました」
インターネットもない時代に、大人向けの難しい飼育書を読みながら、手探りで学んでいたそうです。さらに、サラリーマン時代に知人の金魚飼育関連のYouTube配信を手伝った際、仕入れた金魚が次々と病気になっていく姿に、疑問が深まったと言います。
「ネットで調べられるものはすべて調べ尽くし、あらゆる手を施しましたが、どうにも元気にならない。そこで思ったんです。“そもそも金魚の販売構造がおかしいのではないか”と」
金魚が伝来した当初、その価値は非常に高く、一部の武家や貴族だけが楽しめる贅沢な存在でした。しかし今、一般家庭でも安価に手に入るようになり、長い歴史の裏側で小さな命が「切り花のように消費されるようになった」と青柳さんは話します。
「高度経済成長期以降、あらゆるものにおいて低価格化と大量消費が進みました。金魚も、病気だろうと数を売らなければ経営が成り立ちません。経済的には正解でも、倫理的にはどうでしょう。だから私は、このお店で構造そのものを覆したかったんです」
青柳さんは様々な論文や資料を読み込み、独自に管理方法を確立させると、金魚たちの生命力を高めてきました。その成果から、全国の愛好家がKIICHIを訪ねてくるようになったのです。
一方で、現在のスタイルでは利益は薄いと話します。そのため、元ディーラーの経験を活かして別会社でも働き、中古車販売やなんでも屋をしているそうです。
「しばらくはこの二足の草鞋スタイルを続けたいと思います。やっぱり飼い主さんと長く、3年でも4年でも一緒に過ごしてもらいたいんです。それが“お互いに”、豊かな人生でしょう」
青柳さんが水槽の前を歩くと、金魚たちが甘えるようにふわりと寄っていきます。この金魚たちが誰かに永く愛されることを祈って、今日も青柳さんは丁寧にお世話を続けています。
取材日 2025/11/25
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Information

金魚屋 KIICHI
住所 神奈川県横須賀市東逸見町2丁目70
電話番号 046-874-7003
営業時間 10:00~19:00
定休日 なし
アクセス 京浜急行「逸見」徒歩4分
URL https://nishikigoi-kiichi.com/

Writer小林有希
東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。

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