逗子駅から10分ちょっと歩いた場所にある「とうふ工房とちぎや」。テラス席を備えたウッディな外観は一見するとカフェのような佇まいですが、なんと今年で創業95年目を迎える老舗のお豆腐屋さん。逗子のローカルたちに親しまれている一軒です。
逗子駅から10分ちょっと歩いた場所にある「とうふ工房とちぎや」。テラス席を備えたウッディな外観は一見するとカフェのような佇まいですが、なんと今年で創業95年目を迎える老舗のお豆腐屋さん。逗子のローカルたちに親しまれている一軒です。
創業時から続く伝統的な地釜焚き製法を守り続け、その日の気温や湿度を考慮しながら“にがり”の量を調整し、最適な食感に“寄せて”いく。現在店の看板を守る3代目の亀田勝さんは、そんな初代からの教えを継承しながら新しい試みにも挑戦。その中で生まれたのが名物の「たのくろ豆豆腐」です。
「たのくろ豆とは三浦半島地域に伝わる在来大豆で、そもそもは枝豆や味噌など農家の持久作物として植えられてきた大豆です。ある時、知り合いの三浦の農家から『たのくろ豆を作りすぎたから、これで豆腐を作ってみないか?』と言われたのがことの始まりでした。しかし栽培や数の確保が難しいため、相模原市の大豆生産農家に協力してもらい、畑を借りて葉山産の豆種を植えて収穫するところから始めました。今でも毎年、相模原の畑で収穫作業を続けています」(亀田さん)
品質改良された種が多い中で、栽培が難しく豆腐作りの過程でも腕が試されますが、「地元在来の大豆の素晴らしさを広めていきたい」と、亀田さんは話します。
店内には、相模原の農園で育てている枝豆の収穫のお手伝い行った様子を紹介するコーナーも。この畑の一角を借りて「たのくろ豆」を育てています。
「たのくろ豆豆腐」の気になるお味はというと、天然由来の豆の風味が豊かで味わいが濃いのが特徴。そのため「醤油ではなく塩でいただくのがおすすめ」とのことで、にがりに使用している「越前塩」をおまけに付けてくれます。この塩で味わうと豆腐そのものの風味が際立ち、さらにおいしさがアップ!
日本の食文化における大豆の重要さを伝えるため、“町のお豆腐屋さん”として小学校で豆腐作りを教えるなど食育活動にも携わる亀田さん。店内には小学生たちから贈られた感謝の手紙や絵がそこここに飾られていて、地域とのあたたかな結びつきが空間に溢れています。
昔は逗子・葉山エリアに何軒かあった豆腐屋も、スーパーマーケットの台頭によって今では「とちぎや」1軒のみとなってしまったそう。古き良き製法を守り、地産地消の逸品で逗子の人たちを笑顔にする、老舗の挑戦と地元愛がひとつの豆腐に込められています。
取材日 2025/7/25
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Information
とうふ工房とちぎや
住所 神奈川県逗子市久木3-3-36
電話番号 046-873-1112
営業時間 9:00〜18:00
定休日 水曜
アクセス JR横須賀線逗子駅から徒歩13分
URL https://tochigiya-tofu.com
Writer坂井あやの
雑誌やweb媒体で食・酒・旅にまつわる記事を執筆。町場の酒場から星付きレストランまで、おいしい料理とお酒があると聞きつければフットワーク軽く全国へ足を延ばす。ナチュラルワインとサウナと野球が、日々の癒し&楽しみ。
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