ドブ板通りに聞こえるミシンの音。それはオーダーメードスカジャン店「ドブ板コーバスタジオ」の山上大輔さんが店先で作業をしている音です。両手・足・膝を駆使して繰る特殊なミシンがつなぐ緻密な刺繍に、道往く人々はつい足を止めます。
スカジャンの刺繍は「横振り刺繍」といい、群馬県桐生発祥の伝統工芸です。かつてスーベニアショップで働く桐生の職人たちがスカジャンに施し、その技術が横須賀に伝わったとされています。
ドブ板通りに聞こえるミシンの音。それはオーダーメードスカジャン店「ドブ板コーバスタジオ」の山上大輔さんが店先で作業をしている音です。両手・足・膝を駆使して繰る特殊なミシンがつなぐ緻密な刺繍に、道往く人々はつい足を止めます。
スカジャンの刺繍は「横振り刺繍」といい、群馬県桐生発祥の伝統工芸です。かつてスーベニアショップで働く桐生の職人たちがスカジャンに施し、その技術が横須賀に伝わったとされています。
横振り刺繍は糸の方向を縦横に変えて重ねていくので、描かれた龍や虎は光を受けて躍動します。見る人は瞬く間に、刺繍が表現する世界に引き込まれるでしょう。
この技術は一朝一夕では手に入りません。山上さんは「ファースト商会」店主・松坂良一さんから基本的なミシン操作や横文字の入れ方などを学んだものの、複雑なミシン操作に苦心。そこで、横振り刺繍の第一人者である大澤紀代美さんの門下に入りました。
「大澤先生は横振り刺繍を手工芸から芸術に変えた方です。針の振り幅を活かしたグラデーションが特徴的で、作品は絵画にも彫刻にも見えます」
横振り刺繍という表現方法を会得後、山上さんは「アートをもっと身近に」を理念に掲げ、スカジャンを文化芸術として広げるべく、独立・開業しました。
山上さんいわく、かつてパリ・モンマルトルにピカソなどが集まり、町の風景と芸術文化がともに醸成していったように、アートは地域の人々の体験と記憶が積み重なって育っていきます。
「スカジャンを芸術に昇華するには、まずは人々に身近に感じてもらい、感動してもらうことが大切。だから僕は、店先で刺繍を実演することを決めたのです」(取材当時、実演は一時休止中)
山上さんがミシンを繰る光景が、時とともにドブ板通りの景色となじみ、地域の誇りとして蓄積されていきます。そして人々が、横須賀のスカジャンと他の刺繍作品と比べて「価値の違い」を見出したときに、この“小さな芸術革命運動”が結実するのでしょう。
山上さんの活動を応援したい方や、まずは1枚スカジャンを手に入れたい、けれども良い図案が思い浮かばない方は、オリジナルスカジャン「ドブ板酔龍」(M~3L、3色展開、35,000円・税込)がおすすめです。
後身頃にはドブ板通りで飲み歩いて気持ちよくなり、顔を真っ赤にして踊りだした龍が刺繍されています。コンピュータ刺繍ながら、横振り刺繍の風合いを見事再現しています。ぜひお手に取ってみてください。
取材日 2025/1/17
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Information
Dobuita Koba Studio
住所 神奈川県横須賀市本町2-1
電話番号 046-890-6041
営業時間 11:00〜18:00
定休日 水曜
アクセス 京浜急行電鉄「横須賀中央」徒歩7分
URL https://www.instagram.com/dobuita_koba_studio/
Writer小林有希
東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。
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