【横須賀】須軽谷の田んぼで蘇る“横須賀の米” 鈴木康太さんの稲作と挑戦、未来への想い

Release2025.12.05

Update2025.12.05

【横須賀】須軽谷の田んぼで蘇る“横須賀の米” 鈴木康太さんの稲作と挑戦、未来への想い

Release2025.12.05

Update2025.12.05

秋風に揺れる黄金の稲穂。横須賀市須軽谷の田んぼで、「ベルツリーファーム」の鈴木康太さんは、今年も稲刈りの季節を迎えました。

実りの秋、須軽谷の田んぼで

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稲刈りは9月。

雨が続くかと思えば、急に晴れ間が続くなど、不安定な天候の中での作業でした。

それでも稲は台風にも倒れず、無事に実りの時を迎えます。

作業はまず、田んぼの外周をぐるりと手作業で刈り取るところから始まります。

「機械が入りやすくするためです」と、作業の合間に軽く笑って教えてくれるその表情には、長年稲と向き合ってきた人だけが持つ落ち着きと自信がにじんでいます。

天候に振り回されながらも、稲の成長を信じ、収穫の日を迎える。

その瞬間を大切に迎える農家の営みが、力強さをもって伝わってくるひと場面です。

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続いて登場するのは、稲刈りの現場で欠かせない存在、刈取りから結束までを一台でこなす「バインダー」と呼ばれる収穫機です。

見た目はコンパクトながら、その扱いは想像以上に繊細で、操縦には熟練の感覚が求められます。

一見すると、ただまっすぐ進むだけに見えますが、実はこれが難しい。

機体は自らの力で前へ進み、その振動と推進力に負けないよう、絶妙な力加減とコツが必要です。少しでも手元がブレると、すぐに田んぼの中で左右へふらつき、初心者であれば思わず「あれ、曲がっちゃった…」と焦ってしまうほど。

エンジン音が響く中、黄金色の稲穂を確かに捉え、機械と人が呼吸を合わせるように作業は田んぼの外周をなぞっていきます。

そんな緊張感と高揚感が入り混じる瞬間に、収穫作業の“醍醐味”が宿っています。

コンバインを使わない理由——「わら」に価値があるから

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「わらを欲しいという人が多いです。神棚用に使う人や、家庭菜園で雑草止めに使う人もいます」

多くの農家が使うコンバイン。

コンバインは、刈取と一緒に脱穀・選別の作業を一台でこなせるという便利さがありますが、あえて使いません。

手間がかかっても、稲を丁寧に刈り取って、わらの形を保ったまま収穫します。

便利さよりも、地域での需要を優先する——そこに、地域の農業を支える“やさしい経済”が見えてきます。

天日干しに込めた時間の手ざわり

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稲を刈り取ったあと、すぐにご飯になるわけではありません。

ここからが、むしろ本番です。

刈り取った稲は、天候を見ながら約10日間、天日で干します。

太陽と風が米を育てる、昔ながらのやり方です。

十分に乾いた稲は脱穀機にかけて、籾(もみ)を取り出します。

「原始的すぎる」と笑うその機械は、シンプルながら力強い存在。

風と叩きの勢いで、籾だけを弾き出していきます。

次は、籾殻を取り除いて玄米にする工程。

ここでも、古い機械を動かしながら一日がかりの作業になります。

「うちの機械はしょぼいからね」と苦笑しながらも、手を抜くことはありません。

一粒一粒に手をかけ、丁寧に玄米を仕上げていきます。

脱穀のときに出る籾殻(もみがら)も無駄にはしません。

畑の肥料になったり、農家に引き取られたりと、ここにも、「命の循環」があります。

もち米の収穫と夢

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別の田んぼでは、もち米が植えられています。

通常の稲よりも収穫が遅く、11月中旬頃まで育てます。

「いずれは、このもち米で“色を混ぜた切り餅”を作りたいです」

忙しさの中でも、そんな新しい挑戦の構想を語る農園主・鈴木さんの目は輝いています。

横須賀・須軽谷に息づく田んぼの記憶

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横須賀市須軽谷で農業を営む「ベルツリーファーム」農園主・鈴木康太さん。

江戸時代から代々続く実家の農家を継ぎ、就農して10年以上になります。

土づくりから栽培まで一つひとつにこだわり、旬の野菜を丁寧に育てる傍ら、

農業技術の研究や、独自の出荷ルートづくりにも力を注いでいます。

そしてもう一つ、鈴木さんが手がけているのが、かつて横須賀のあちこちで見られた“稲作”です。

「米作りは手間がかかるけれど、自然と一緒に生きている感覚があるんです」

そう話す鈴木さんの田んぼには、風が通り、空が映り、かつての横須賀の原風景が静かに息づいています。

受け継がれる風景——横須賀の田園を守るために

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武山丘陵の西南山麓に位置する須軽谷(すがるや)は、かつてどこを見渡しても田園風景が広がっていました。

しかし、キャベツやダイコンを中心とする「三浦半島型農業」へと時代が移り変わるにつれ、稲作は次第に姿を消し、多くの田んぼが畑へと転換されていきました。

「子どもたちの世代に、田んぼの風景を残したい。」

その想いから鈴木さんは、非効率と言われる稲作をあえて続け、保全活動に取り組んでいます。

“横須賀の米”を未来へ届けるために

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「畑仕事は“商売”の感覚が強いけど、稲作は“自然と共に生きる”仕事。効率では測れない価値があります」

日々の水管理、大雨のあとの水路の土砂除去、スズメよけの網張りなど、その一つひとつの作業が、風景を未来へつなぐための“祈り”のようにも見えます。

現代人の米離れを感じつつも、鈴木さんはあきらめません。

「食べる人がいないから」と手を止めるのではなく、“今の時代に合った米の形”を模索し続けています。

若い世代にも親しんでもらえるよう、収穫したもち米を加工。

野菜パウダーで色づけした切り餅やのし餅など、見た目にも楽しい商品を作りたいと話します。

(※精米での販売は行っていません)

「若い人が“横須賀の米”を手に取るきっかけを作りたい。昔ながらの農業を残すためには、形を変えて伝えることも大事ですね」

手に取る人の笑顔を想いながら、鈴木さんの挑戦は、田んぼから未来へとつながっていきます。

取材日 2025/9/22

※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

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人生や農業の大先輩のお父様と一緒に作業を行なっていました。

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稲を植えた6月の田んぼの様子

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夏には、木で完熟させるナチュラルトマトの栽培に力を入れています。野菜直売所「須軽谷の里」などで購入できます。

Writerうみのとなり

ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

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