旬の三浦野菜を美味しくいただく。
40年以上テレビの料理番組に従事し、料理と食材に携わった筆者の視点を通して、三浦野菜の素材と背景を知り、美味しくいただくレシピをお届けする連載です。
1本1本丁寧に収獲された大根は、まだ泥んこ。
今回は、大根が私たちの食卓に届くまでの、農家さんのありがたいお仕事を知ります。
旬の三浦野菜を美味しくいただく。
40年以上テレビの料理番組に従事し、料理と食材に携わった筆者の視点を通して、三浦野菜の素材と背景を知り、美味しくいただくレシピをお届けする連載です。
1本1本丁寧に収獲された大根は、まだ泥んこ。
今回は、大根が私たちの食卓に届くまでの、農家さんのありがたいお仕事を知ります。
軽トラに積んで自宅に戻った大根は、すぐに荷台に積んだままの状態で農業用水をかけられます。これはこのあと洗う時の泥を落としやすくするため。
鈴木さんと奥さんは、これから漁に出るの?という格好に着替え始めました。長い作業用の手袋をつけて、さらにその上から片手に軍手をはめます。大根を並べると思われる車輪付きの大きな荷台が3台運ばれてきて、洗い桶を囲む様にセッティング。収穫後の作業が始まります。
お母様が洗い機に横付けされた台に乗って、軽トラから洗い機のベルトコンベアーに大根を1本ずつ並べていくと、ベルトにのって回りながら水のかかるエリアを通って鈴木さんと奥さんが待つ大きな洗い桶に大根が落ちていきます。
奥さんと鈴木さんは洗い桶の中で軍手をはめた手でさらに軽くこすりながら土を落とし、鈴木さんは程よい大きさでまっすぐなもの、多少曲がったもの、奥さんは傷があるものと大きすぎるものに分けながら3つの荷台に、これまたていねいに、さらには端から大〜小とざっくりと分けながら、根側をきれいに揃えて並べていきます。
誰が欠けても滞ってしまうアウンの呼吸で進む作業です。お母様は、洗い桶にたまりすぎないようにベルトコンベアーに並べる速さを調節し、奥様と鈴木さんは休むことなく大根をこすりながら仕分け。
見ているだけで腰が痛くなる様なお母様の姿勢、真冬の冷たい水を物ともせずに、手元はあくまでも優しく。話しをすることはないのですが、お互いのことも気遣っているのがよくわかります。
今まで40年以上の料理や食材の取材現場で、本当に美味しいものを作り続けている生産者の方々(特に農家さん、おそらく時間をかけて育てるという行為だからと思われます)は、皆さん家族仲がよく、ほぼ例外なく夫婦の仲も良いな〜、と思ってきたのですが、鈴木さんご一家もまさにその通り。奥様からご主人への深いリスペクトが、ポソリとご主人に聞こえないところで話してくださる言葉からも伝わってきます。
言うまでもなく大根の旬は冬。寒い季節に辛い作業です。軽トラの大根が減ってくると、思わず「あと少し!!!」と声をかけたくなってしまいます。
きれいに根元を揃えてびっしりと並べられた大根は本当に美しくて惚れ惚れ。
しばらくおいて水気が切れたら、これからさらに根の先を切りそろえ、葉の先も箱に入るようにさらに短く切りそろえられます。傷のついた大根は切られてカット大根に!その後、箱詰め作業が行われるそうです。
これが大根を出荷するまでの作業の一部です。
箱詰め作業は明日、ということで拝見しなかったのですが、重量も決められていますし、不定形な大根をきれいに傷つけないように大根専用の箱に詰めるのは難しそうで時間もかかると想像できます。
「そこまでやるんだ…」というのが正直な感想ですが、鈴木さんの口からは
「やっぱり台所に持って行った時にきれいな方がいいでしょう」と、買う人食べる人のことを考えた言葉が自然に出てきて、ただ頭が下がります。
いただいて帰ったその日の大根は、ずっと雨が降っていなかったという畑から採れたとは思えないみずみずしさ。生で食べるとサクサクで水分がほとばしり、みそをつけると延々と食べ続けられる美味しさです。厚い輪切りにしてスープで煮たものは、とろけんばかりで箸が止まらず、心から「ごちそうさま、ありがとう」と言いたくなる幸せな味がしました。
取材日:2024年2月26日
撮影:角田洋一

Writer戸叶 光子
幼い頃から食べるのが大好きで、卵かけごはんは「黄身を崩さず自分でさっと混ぜながら食べたい」(当時は母親がよくかき混ぜて子ども達のごはんにかけてくれるのが普通だった)、「いちごは絶対潰さないで」(その頃のいちごは酸っぱくて、砂糖と牛乳をかけて潰して食べるのが定番だった)などなど、食べ方に変なこだわりをもつ子供だった。 大学卒業後は料理編集者の仕事に就き、その後、料理番組の制作にも40年ほど携わって食こそ人生の日々を過ごしてきた。キャンプ、バレエ、猫を愛し、料理、食材の取材はライフワークにしたいほど好き!

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