【連載】三浦大根命名100周年デザインプロジェクト③ふかふかの土から始まる『三浦大根』の種まき

Release2025.12.05

Update2025.12.05

【連載】三浦大根命名100周年デザインプロジェクト③ふかふかの土から始まる『三浦大根』の種まき

Release2025.12.05

Update2025.12.05

8月に三浦を訪れると、夏のスイカやかぼちゃの収穫を終えた畑では、早くも大根やキャベツを迎えるための支度が始まっていました。

三浦大根の種まきが行われるのは、例年9月10日前後。地元 宮田の守り神、若宮神社の相撲大会までに、種をまくという習慣が古くからあったそう。このタイミングに合わせて、私たちが訪れたのは南下浦町の「やまさ園」。

やまさ園の吉田和子さん、息子の勝一さん、孫の真以さんとの出会いは、今年の三月の取材がきっかけでした。

【連載】三浦野菜の作り手を知り、魅力を伝えるデザインプロジェクト 「三浦大根」の美味しさを語り伝える

農家料理の先生としても活躍する和子さんの、三浦大根へ注ぐ深い愛情と情熱に心を動かされ、「今年の冬は、やまさ園の三浦大根づくりを間近で見せていただきたい!」。そんな思いで3月からずっと楽しみにしていた、種まきの日がついにやってきました。

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炎天下の中始まる、三浦大根の種まき

夏日のような暑さと強い日差しの中、まずは種をまくために畑前代に肥料を散布してから畝を立てます。畝の上に35~40㎝間隔で種まきをしていきます。

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土の準備が整ったところで、いよいよ種まきです。三浦市農協オリジナル品種の「中葉3号」という、三浦大根の種を専用のタネまき機のケースに投入し、すいすいとまいていきます。

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「私が嫁いできたときは、種まきも大変な作業でした。耕耘機で畑を耕し、一人がサクを切り、もう一人が約30㎝間隔で肥しを振る。その間に5~6粒のタネをまき、最後は足で蹴とばすようにして土をかけていたんです。1日中作業しても、たいして進まなかったですよ」と、当時を振り返る和子さん。

当時に比べて、機械に助けられる部分も多いそうですが、美味しい大根を届けるための、深い愛情と情熱を感じずにはいられません。

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作業の最後は、全員で協力して「寒冷紗」という、農業用の布をかけます。

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「新芽を好む虫やウサギ、鳥への対策や風よけはもちろんだけど、何より『湿度と温度』を保つ役割が大きいんだよ。まだ赤ちゃん大根なので、こうして環境を整えてあげることが大切」と、勝一さんが教えてくださいました。

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足元を見ると、まるでふかふかのお布団のような土。その柔らかさがとても印象的でした。

「三浦大根は、とにかく柔らかい土を好むんです。だから、栽培に向かない畑もたくさんあります。 僕たちのいくつかある畑の中でも、ここの土質が一番合っています。それでも、毎年作り続けていると連作障害は絶対に起きてしまう。土が硬くなると、その圧力に大根がつぶされて、根の部分が変形した『コブラ大根』ができちゃうんです。実際、昨年はたくさん出来てしまって。 だから今年は、夏が始まる前に『緑肥』をまいて土を休ませ、万全の状態に整えました」

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「なっちゃったものはしょうがないから、次にどうしたらいいのかを考える。きっとなんとかなるから。」

そう言って笑う勝一さん。自然相手の厳しさを知っているからこそ、どんと構え、明るく前を向く「やまさ園」のご家族の姿がとても印象的な1日でした。

次回は、三浦市内の様々なエリアの農園を巡りながら、種をまいてから1か月たった大根の成長をお届けしたいと思います。

参考文献:吉田知子 著『三浦大根と私の台所』

取材日 2025/9/10
撮影  角田洋一

地元良品JOURNEY三浦半島篇と、鎌倉のテキスタイル研究所Casa de pañoのコラボ企画「三浦野菜デザインプロジェクト」今回のテーマは、今年命名100周年を迎える「三浦大根」です。デザインプロジェクトでは、三浦大根を今日に繋ぐ人々との対話を通して、ファッションデザイナーの髙島一精さんと唯一無二の「三浦大根BAG」の製作を目指します。

Fashion Designer


髙島 一精/ Kazuaki Takashima 

1973年 熊本生まれ。
文化服装学院を卒業後、株式会社イッセイミヤケに入社。
株式会社三宅デザイン事務所に移籍し「ISSEY MIYAKE」、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のデザインチームに参加する。
2005年に株式会社エイ・ネットから自身のブランド「Né-net」がデビュー。
派生ブランド「にゃー」とともに、国内外で多くのファンをつかむ。2020年に独立し、「This is not a cat.」と称した活動をスタート。ファッションデザインに留まらず、キャラクターデザインや作品制作など、共感でつながる人に届く距離感でものづくりを続けている。
www.kazuakitakashima.net

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Fashion Designer


髙島 一精/ Kazuaki Takashima 

1973年 熊本生まれ。
文化服装学院を卒業後、株式会社イッセイミヤケに入社。
株式会社三宅デザイン事務所に移籍し「ISSEY MIYAKE」、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のデザインチームに参加する。
2005年に株式会社エイ・ネットから自身のブランド「Né-net」がデビュー。
派生ブランド「にゃー」とともに、国内外で多くのファンをつかむ。2020年に独立し、「This is not a cat.」と称した活動をスタート。ファッションデザインに留まらず、キャラクターデザインや作品制作など、共感でつながる人に届く距離感でものづくりを続けている。
www.kazuakitakashima.net

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写真提供:三浦市農協 休閑期の畑一面に広がる緑肥。 根を深く張る緑肥には、硬くなった土壌を改善する効果があります。 大根の根っこがしっかりと伸びるよう、まずは土の状態を整えることが大切なのだそう。

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写真提供:三浦市農協 緑肥のすき込み作業をしている様子。

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種まきから約1週間。 寒冷紗の下で無事に芽吹いた様子のお写真が、やまさ園さんから届きました。

Writerいとうまいこ

大学卒業後、大手家電メーカーで商品企画や展示に関わる。そのときの経験からテキスタイル(布)に関わる仕事をしたいと考え、2023年にテキスタイルのギャラリー「Casa de paño」を鎌倉で開業。展覧会やワークショップの企画に加え、三浦半島の豊かな自然や生き物、暮らしをモチーフにした布製品の商品企画を行っている。本企画は、三浦半島で暮らす人・営む人へのインタビューをもとに、もようのデザインを通して地域の魅力を再発見し共有する試みです。

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