地元良品JOURNEY三浦半島篇と、鎌倉のテキスタイル研究所Casa de pañoとのコラボ企画「三浦野菜デザインプロジェクト」の新シリーズ。今回の主役は、三浦の名を冠する「三浦大根」です。今年、命名100周年を迎えます。デザインプロジェクトでは、三浦大根を今日に繋ぐ人々との対話を通して、ファッションデザイナーの髙島一精さんと唯一無二の「三浦大根BAG」の制作を目指します。始まりは、三浦大根のルーツを知ることから。そこには、探求心にあふれる作り手との出会いがありました。
Release2025.11.28
Update2025.11.29

地元良品JOURNEY三浦半島篇と、鎌倉のテキスタイル研究所Casa de pañoとのコラボ企画「三浦野菜デザインプロジェクト」の新シリーズ。今回の主役は、三浦の名を冠する「三浦大根」です。今年、命名100周年を迎えます。デザインプロジェクトでは、三浦大根を今日に繋ぐ人々との対話を通して、ファッションデザイナーの髙島一精さんと唯一無二の「三浦大根BAG」の制作を目指します。始まりは、三浦大根のルーツを知ることから。そこには、探求心にあふれる作り手との出会いがありました。
明治30年代、農業振興のための「農会」が全国で結成され、三浦でも大根の技術改良に向けた活動が盛んになりました。当時、農会職員だった鈴木寿一氏は、市場で評価の高かった「練馬系ダイコン」と、三浦在来の「高円坊ダイコン」を交雑し、品種改良に乗り出します。そして大正14年(1925年)、三浦産の大根が、正式に「三浦大根」と命名されました。
その後も、形状の改良やウイルス病対策などが続けられ、「三浦大根」は三浦野菜を代表する存在となりました。
現代では小型で軽量な「青首大根」が主流となりましたが、「お正月のなますは、三浦大根でなければ」という根強いファンが、今も三浦大根を支えています。 そして何より、三浦大根に愛着と情熱を持つ生産者たちの存在があります。彼らの手によって、市場から姿を消すことなく、今も大切に作り続けられています。
三浦大根の掛け合わせの親となった三浦の地大根「高円坊ダイコン」。そもそも三浦では、いつから大根の栽培が始まっていたのでしょうか?
その歴史を紐解くため、私たちはまず「神奈川県農業技術センター 三浦半島地区事務所」を訪ねました。そこで見せていただいたのが、歴史資料である『新編相模国風土記稿』の第5巻。
江戸時代初期の正保4年(1647年)の時点で、高圓坊村(現:三浦市初声町高円坊)の地が大根の栽培に適しており、多く栽培されていたことが記されています。
時代は進み、江戸時代後期。 天保12年(1841年)の記録には、大根は献上品の一つであり、「鼠(ねずみ)ダイコン」と呼ばれていたと、記されています。さらに明治時代に入ると、三浦の中でも高円坊の地大根が美味とされ、その名をとって「高円坊ダイコン」と呼ばれることが一般的となったと言われています。
今はもうその姿を見ることが叶わない「高円坊ダイコン」。私たちは、その手がかりを求めて、三浦市初声町にある「高梨農場」の高梨雅人さんを訪ねました。
高梨さんは、技術センターの方から「まずは、高梨さんのところに行ってごらん。三浦野菜の歴史やルーツについて、深く知っていらっしゃるから」とご紹介いただきました。筑波大学で農林学を学んだ知見を活かし、三浦野菜の栽培に取り組まれている、知識と探求心にあふれた生産者です。
高梨さんが見せてくださったのは、西山市三 編著『日本の大根』。 現在では目にする機会も少ない、大変貴重な文献です。
文献を読んでみると、かつてこの地に存在した「高円坊ダイコン」の姿が、鮮やかに浮かび上がってきました。
その記述によると、高円坊ダイコンは「首が太く長く、先端に向かって細る」独特の形状をしていたといいます。 干し大根には適さないものの、煮食用としては「極めて優秀」であったそう。そして、江戸時代後期、徳川11代将軍・家斉に対し、浦賀奉行を通じて高円坊の名主からこの大根が献上されていたとのこと。
文献を通して当時の様子を想像するのは、とてもワクワクする体験でした。将軍様も、この大根の煮物を食べていたのかもしれませんね。
さて次回は、三浦市農協にご協力いただき、昭和から現代に至るまでの「三浦大根の歩み」をさらに深く紐解いていきます。
参考文献:
1.蘆田伊人校訂・圭室文雄補訂『新編 相模国風土記稿』〈第5巻〉雄山閣
2.西山市三編著 『日本の大根』 (1958年) 日本学術振興会
3.『かながわゆかりの野菜』神奈川県園芸種苗対策協議会
4.『かながわの地方野菜』 神奈川県園芸種苗対策協議会
取材日 2025/5/15~
撮影 角田洋一

Writerいとうまいこ
大学卒業後、大手家電メーカーで商品企画や展示に関わる。そのときの経験からテキスタイル(布)に関わる仕事をしたいと考え、2023年にテキスタイルのギャラリー「Casa de paño」を鎌倉で開業。展覧会やワークショップの企画に加え、三浦半島の豊かな自然や生き物、暮らしをモチーフにした布製品の商品企画を行っている。本企画は、三浦半島で暮らす人・営む人へのインタビューをもとに、もようのデザインを通して地域の魅力を再発見し共有する試みです。

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