三浦半島・芦名に誕生した宿坊「TEMPLE STAY KAN ~観~」。800年の歴史を持つ浄楽寺が、現代人が失いかけた「心の軸」を取り戻すために様々な体験プログラムを用意しています。
三浦半島・芦名に誕生した宿坊「TEMPLE STAY KAN ~観~」。800年の歴史を持つ浄楽寺が、現代人が失いかけた「心の軸」を取り戻すために様々な体験プログラムを用意しています。
「普段、私たちは余計なものばかり見ています。暗闇にすることで、本当に見たいものだけが見えてくる」
浄楽寺には、全国で22体の運慶真作のうち5体が安置されています。照明を落とし、蝋燭の揺らめく灯りだけで、国指定重要文化財である運慶仏と対峙する。これは、電気がなかった鎌倉時代、武士たちが実際に仏と向き合っていた環境を再現したものです。
その空間で、読経が始まります。「南無阿弥陀仏……」静寂を切り裂くように響くお経のリズムに合わせて、一定のリズムで繰り返される読経の音と振動が肉体と魂全体に響いてくるような感覚。
音に身を委ねるうちに、いつしか目の前の仏像と、そして自分自身の心と対峙していることに気づくでしょう。仏像は驚くほどリアルな表情であなたを見つめ返します。その表情は、見る人の心の鏡です。
この特別な時間は、宿泊ゲストだけが無料で、何度でも体験できます(通常2,500円)。
「内観」とは、自分の内側に意識を向けること。そのための最も有効な手段が、手仕事に没頭することです。
小仏像彫像修行は、プロの仏師が作った小さな木彫りの仏像(阿弥陀如来)を、自らの手で彫り上げ、彩色する体験です。約3時間、木の香りに包まれながらノミを振るう時間は、まさに修行。完成した仏像には、バーチャル空間で「御魂」を入れ、あなたの願いを託します。
料金: 宿泊者特別料金10,000円(通常15,000円)
鎌倉彫体験では、伝統工芸「鎌倉彫」の技術を用い、木皿やコースターに彫刻を施します。ただひたすらに線を彫る。その単純作業の繰り返しが、脳内のノイズを消し去り、心地よい「無」の状態へと導いてくれます。作成した皿は持ち帰ることができます。
料金: お一人様7,000円
「お寺でデジタル?」と驚くことなかれ。ここでは、テクノロジーもまた、祈りを可視化するためのツールです。
核となるのは、武士が生と死のはざまで精神を整えたとされる写経修行です。かつて運慶が人々の願いを集め、経典を造立したと伝えられるように、参加者もまた一文字一文字に思いを込め、筆を取り写経を行います。書き終えたお経はタブレットで撮影され、バーチャル空間上に再現された運慶仏へと「奉納」されます。祈りの行為が、時代を越え、現実とデジタルをつなぐ。伝統と最先端が静かに交差する、印象深いひとときです。宿泊者無料(通常5,000円)
バーチャル運慶発願体験では、VRゴーグルを装着し、祈りの背景へ没入します。目の前に浮かび上がる光や仏の気配を手で操作しながら進む、不思議な感覚。運慶の志や和田義盛の願心が立ち現れ、自らの祈りと静かに向き合います。体験後は実際の運慶仏に参拝し、暗闇参りへ。時空を越えて祈りの核心に触れる、特別なひとときです。
宿泊者無料(通常5,000円)
ここでの食事は、地域の歴史を「食べる」体験です。
浜浅葉イタリアン(ジビエ)食体験(Loriga三浦半島食蔵提供)では、大田和地区の豪農が三代にわたって書き残した古文書『浜浅葉日記』をもとに、Loriga(ロリガ)のシェフが当時の食文化や暮らしの背景を丁寧にひも解き、現代のイタリアンとして再構築しました。
コースには、冷蔵庫のなかった時代の知恵である「保存」や「発酵」を、現代的に再解釈した料理が並びます。ゑかいひしを(醤)を使ったカンパチの前菜、野菜の力を引き出した紅芯大根のスープ、蜂蜜で仕上げた丹沢ジビエなど、地元の食材と歴史を一皿ごとに表現しています。
「イタリア料理の枠から少し離れ、この地域の文化を料理に映したかった」と語るLoriga のシェフ。粒状のパスタ・フレーグラに切り干し大根や干し椎茸を合わせるなど、和の要素を取り入れた一皿が、地元の野菜や歴史と響き合い、ここでしか味わえない「三浦半島の味」を形づくっています。
料金: 大人13,200円(全8品)、キッズプレート2,000円
この地は、「郵便の父」前島密翁が晩年を過ごした場所でもあります。「縁の下の力持ちになることを厭うな」という彼の遺訓に触れ、普段は言えない感謝の言葉を葉書に綴る。境内にある「前島密翁の胸像付きポスト」へ投函すれば、その想いはきっと大切な人へと届くでしょう。
所要時間: 30分
料金: 1,000円(郵便はがき代込み)
この宿坊体験のいちばんの目的は、「内観(ないかん)」、静かな時間の中で自分の心と向き合うことです。この地は、仏師・運慶、武将・和田義盛、そして「郵便の父」前島密翁など、歴史に名を残す人々が、人生の節目に立ち寄り、自分自身と向き合った場所でもあります。大きな決断の前や、これからの道を考えるとき。静かな環境の中で心を整えることで、新しい一歩を踏み出してきた人たちがいました。
訪れる人にも、この場所で「少し立ち止まって考える時間」を持ってほしい、そんな思いが、この宿坊には込められています。食に向き合い、海や山の気配を感じ、地域の中に身を置く。そうして外へ広がった意識は、ゆっくりと自分自身へ戻ってきます。旅の終わりに残るのは、特別な思い出と、少し軽くなった気持ち。それが、この宿坊体験ならではの魅力です。詳細は、HPをご確認ください。
取材日 2025/11/28
※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Information

TEMPLE STAY KAN ~観~
住所 神奈川県横須賀市芦名2-30-5(浄楽寺内)
電話番号 046-856-8622
アクセス 京急バス「浄楽寺」バス停下車 徒歩1分
URL https://templestay-kan.com

Writerうみのとなり
ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

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