群馬県吾妻郡発祥のこんこん草履を元に、独自の解釈で「ヨコスカスリッパ」を考案し、技術を継承している「布ぞうり工房 禅蔵」の市ノ瀬絵里子さん。
横須賀エリアで自作できる教室では、海外からの注目も高いカラフルなスリッパを作ることができます。
群馬県吾妻郡発祥のこんこん草履を元に、独自の解釈で「ヨコスカスリッパ」を考案し、技術を継承している「布ぞうり工房 禅蔵」の市ノ瀬絵里子さん。
横須賀エリアで自作できる教室では、海外からの注目も高いカラフルなスリッパを作ることができます。
群馬県吾妻郡中之条町に伝わる雪ぐつ・こんこん草履。
植物の「すげ」を芯に布を巻き付け編み上げるもので、様々なデザインがあり、形はまるでスリッパのよう。今は作り手も少なくなっているそうです。
このこんこん草履を元にした「ヨコスカスリッパ」を考案し、横須賀で技術を継承しているのが「布ぞうり工房 禅蔵」の市ノ瀬絵里子さん。
自ら販売するより、作り手を増やす教室(10,000円=キット・テキスト込み)や、作業台・木型の販売を積極的に行なっています。
「すげ」の代わりにホームセンターで市販されているコードを芯にし、色鮮やかな布を巻き付けてミシンがけした紐をつかっているヨコスカスリッパ。
しっかり編み込まれているため、足の裏の感触にスカスカしたところがなく、頑丈さを感じます。
足の甲を覆う部分(スリッパでいう甲表)も、独自の木型を活用して立体感を維持しながら編み込んでいるため、とても丈夫です。
2014年7月にフランス・パリで行なわれたJapan Expoで、市ノ瀬さんはヨコスカスリッパと、布ぞうりを出展しました。カラフルな色合いが大人気だったそうです。
「もともとは布ぞうりを作っていたんです。布ぞうりの本を出版する際に知ったのが、こんこん草履でした」と、市ノ瀬さんは群馬に作り方を習いに行きました。
カラフルな布ぞうり作りをしていた市ノ瀬さんは、布コードを使ってこんこん草履と同じ編み方をすることで、独自の製法を編み出しました。
結婚を機に引っ越してきた横須賀で作り続ける決意をしたことと、スリッパのような形をしていることから、これを「ヨコスカスリッパ」と名付けることに。
こんこん草履作りに使っていた木型の型も、作り手が高齢化で新しく作れなくなってきます。市ノ瀬さんは娘さんのご主人と協力し、3Dプリンターを使って再現に成功。上の写真の左側と中央の型が3Dプリンターのものです。
試行錯誤を繰り返し、年輪のような見た目になる、木の粉を含んだ樹脂を使っているのがポイントです。
ヨコスカスリッパの製作教室は、大津や馬堀海岸のレンタルスタジオを使って、週に1回以上の頻度で行なっています。
キットに含まれている材料の布コードは事前に市ノ瀬さんが作成し、それを木型や作業台といった専用の道具を使って、その場で編み込んで作ります。教室は1、2人から6人程度の参加者で和気あいあいと楽しみながら作ります。
「自分でヨコスカスリッパを作るのも楽しいのですが、ヨコスカスリッパの作り方を教えて、作れる人が増える方がもっと楽しいんです。最初は上手くなかった人が、何度も通っているうちにきちっと作れるようになって。そんな成長を見ているのが本当に楽しい」
教室に通う生徒さんはものづくりが好きな県外の人が多く、地元・横須賀の人が多くありません。
「横須賀在住の、ヨコスカスリッパを作ってくれる人が増えたらいいなと願っています」
2025年秋には横須賀中央駅近くの商業施設「さいか屋 横須賀店」でヨコスカスリッパと布ぞうりの展示販売会も決定。市ノ瀬さんが編んだヨコスカスリッパの実物を見られます。
いつの日か、ヨコスカスリッパがカレーやいちごに並ぶ横須賀の名産品になるかもしれません。
取材日 2025/7/11
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Writer奥野大児
1971年生まれ。大学卒業後20年ほどシステムエンジニアで会社勤めをした後にフリーライターとして独立。グルメ・IT・旅などのジャンルで、お出かけレポートからインタビュー、調査記事までいろいろ書きます。
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