三崎口駅からバスに揺られて約10分。とんびの鳴き声が響く閑静な住宅街に「パンのきたがわ」の看板は立っています。導かれていくと、猫たちが気持ちよさそうに寝転がる駐車場に小さな店舗がありました。
店主の北川絹枝さんがつくる「バタートップ」(1.5斤/600円・税込)は、生食パンのようにしっとりして小麦の味わいが強い。タンパク質を多く含む最上級小麦粉「スーパーキング」(日清製粉)を使っているため、深いコクと弾力のあるパンに焼きあがるそうです。
「ベースは食パンの一般的なレシピなんだけど、他のお店を研究しながら材料を自己流に変えていったの。塩は沖縄産の塩分濃度が低くてまろみのある天然塩、砂糖は極微粒のグラニュー糖がお気に入り」(北川さん、以下同)
バタートップにプロセスチーズがごろごろ入った「チーズトップ」(1.5斤/780円・税込)は一番人気で、お客さまの声から生まれた商品です。
「チーズいっぱい入れて!って頼まれてね。チーズの種類や量によっては溶けて穴が開いちゃうから、ほどよく溶かすためにチーズをカットして入れているのよ」
「ちっちゃい子どもがパンをかじる姿って可愛いじゃない?それが見たくて、パン教室に通いながら家族にパンをつくっていたのよ。45年も前の話よ」
趣味が高じて、本格的に製パン技術を学びたいと東京の調理学校に通った後、逗子市の自宅でパン教室を開きました。
「それで20年くらい前かしら。娘がインターネットでパンの通信販売をしてみようって。送料分の850円だけで購入できる『お試しセット』を販売したらだんだん注文が増えていったの」
12年前に三崎口に引っ越したとき「パンの販売は辞めるつもりだった」と話す北川さん。しかし妹の郁子さんやご近所さんに強く勧められ、物置を店舗に改装し、「パンのきたがわ」を開店させました。
子どもたちのためにつくっていたパンを、今や多くの人が笑顔で頬張っています。もちろん、北川さんのお孫さんたちも。
お孫さんはたまにお手伝いで、厨房に入って一緒にパンをこねてくれるそうです。その姿を思い出したのか、北川さんは目を細めて微笑み、こう呟きました。
「『ばあばのパンは食いつきが違う』なんて言われたら、こっちもはりきっちゃうわよね」
取材日 2025/3/27
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Information
パンのきたがわ
住所 神奈川県三浦市三崎町諸磯1133
電話番号 080-3454-2757
営業時間 9:30〜16:00(火・木・金・土)
定休日 月・水・日曜
アクセス 京浜急行バス「天神町」徒歩7分
URL https://pannokitagawa.web.fc2.com/
Writer小林有希
東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。
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