浦賀駅からほど近く、日本茶カフェ/日本茶専門店「茶井(ちゃい)」の暖簾をくぐると、静かな湯気とともにお茶の香りが迎えてくれます。
浦賀駅からほど近く、日本茶カフェ/日本茶専門店「茶井(ちゃい)」の暖簾をくぐると、静かな湯気とともにお茶の香りが迎えてくれます。
日本茶インストラクターの資格を持つ店主の佐藤国久さんが、全国の産地を巡って選び抜いた茶葉はどれも個性と香りが際立つ逸品ばかり。
その一煎には、風土の恵みや生産者たちの想いが詰まっているだけではありません。時には、壮大な物語を感じさせるものもあるようです。
浦賀は幕末に黒船が来航した街。そして若き龍馬が土佐藩屋敷の警備にあたった街であり、龍馬の妻・おりょうが余生を過ごした街でもあります。
そんな歴史にちなんで生まれたのが〈黒船茶〉シリーズで、中でも特に人気なのが「龍馬のお茶(長崎産)」(喫茶代 550円・税込/1杯)です。
「このお茶は72〜73度くらいがちょうどいいんです」と佐藤さん。鉄茶釜から汲んだお湯を茶器に移し、丁寧に温度を下げてから、1分ほどで抽出します。これ以上置くとカテキンなどが出過ぎて、味わいにえぐみが出てしまうそうです。
茶碗に注ぐと、深緑が際立つ美しい水色(すいしょく)が広がり、柔らかな香りがふわりと立ちのぼります。口当たりもまろやかで、ほのかな甘みを感じられます。
「『龍馬のお茶』は特に、水色がきれいなんです。深蒸し茶は他よりも蒸す時間を少し長くとるので、濃い緑色が出やすいんです。ただし茶葉が脆くて、濁りやすい面もあります。だから透明感のある水色は、上質な茶葉で丁寧につくりこんでいる証なんです」
「龍馬のお茶」には、もうひとつ、大浦慶という女商人の物語が込められています。彼女は長崎・出島でオランダ人相手に日本茶貿易を始め、財を成した女傑。そして、坂本龍馬が長崎で設立した日本初の商社「亀山社中」の活動資金を出すなど、開国活動を影ながら支えた人物としても知られています。
江戸という時代に、女性ながら外国人と渡り合い、新時代を切り拓く大浦慶の姿に魅かれたという佐藤さん。「”身近に”感じたからこそ、心に刺さったんでしょうね」と笑います。
佐藤さんは大学卒業後、大手コーヒーチェーンで働き、喫茶店を開く夢を描いていました。やがて家業を継ぎ、コーヒーではなく日本茶インストラクターとしての道を歩み始めた理由をこう語ります。
「今もコーヒーは好きですが、生産地が地球の裏側にあって、どうしても遠くに感じられます。一方、日本茶は日本の土、気候、そして日本人の営みの中で生まれ、育った“身近な”もの。物語をありありと想像できる距離感だからこそ、心に響き、奥深さを感じられたのだと思います」
大浦慶が商機を見出し、そして龍馬の開国を支えた日本茶。もしかしたら女傑も一杯に温もりを感じ、心を落ち着けたのかもしれない。一煎の背景にある歴史と人の想いを想像しながら味わえば、 湯気の向こうにふと、幕末の風景が立ち上るかもしれません。ぜひ、この浦賀の地でご賞味ください。
取材日 2025/10/21
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Information

日本茶カフェ/日本茶専門店「茶井」
住所 神奈川県横須賀市浦賀3-1-10
電話番号 046-841-0713
営業時間 11:00~18:00(火~土)、12:00~17:00(日・祝日)
定休日 月曜 (日曜・祝日は不定休 ※開店状況はグーグルマップにてお知らせ)
アクセス 京浜急行「浦賀」徒歩1分
URL https://www.e-chai.jp/cafe/index.html

Writer小林有希
東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。

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