加藤農園では、毎日の収穫と家族の食卓から、自然とレシピが生まれてきました。焼いても揚げてもおいしい大根。農家の台所に息づく知恵から、大根と暮らしの美味しい関係を教わります。
加藤農園では、毎日の収穫と家族の食卓から、自然とレシピが生まれてきました。焼いても揚げてもおいしい大根。農家の台所に息づく知恵から、大根と暮らしの美味しい関係を教わります。
加藤農園・加藤家でよく食卓に上がるのは、豚バラ肉と大根の煮物です。箸を入れると、煮汁が中までしっかり染みていることが分かります。口に含むと、まず醤油の香ばしさと砂糖のやわらかな甘みが広がり、そのあとに豚バラ肉のコクが重なります。噛むたびに大根から煮汁がじんわりとにじみ出ますが、味が濃すぎることはありません。後味は驚くほど穏やかです。豚バラの脂も、大根と合わさることで角が取れ、最後まで落ち着いて食べ進められる煮物になります。
大根のそぼろ煮といえば、家庭料理の定番です。しかし、加藤家のそぼろ煮はまず、大根をコンソメで煮ます。すると大根は、ブイヨンのコクを含んだ洋風の味わいになります。そこに挽き肉のあんをかけ、醤油や砂糖で味を整えます。ベースにあるのはコンソメの風味。和食でも洋食でもない、農家の台所から自然に生まれた一皿です。
「煮物だけじゃない。発想次第で、何にでもなります」その言葉通り、大根の食べ方は次々と広がります。茹でた大根をバター醤油で焼く、大根ステーキ。意外性のある、大根の天ぷら。味噌汁は、いちょう切りではなく、割り箸一本分ほどの太さに切ります。具材は油揚げだけ。それで十分だと言います。鍋料理では、ピーラーで薄くきしめん状にスライスして主役にする方法や、大量の大根おろしを使ったみぞれ鍋も定番です。どれも特別な工夫ではなく、日々の食卓から生まれた知恵ばかりです。
三浦市初声高円坊で「加藤農園」を営むのは、加藤正人さんです。加藤農園のルーツは鎌倉時代まで遡ります。代々受け継がれてきた農業の知恵と、常に新しいことに挑戦する姿勢が、現在の農園づくりの礎になっています。農業に携わって10年。11月から3月にかけての大根の収穫期は、特に忙しい時期です。「今年も大根の時期がやってきました」そう言って、加藤さんは穏やかに笑います。
最盛期の朝には、一日に約1,500本の大根が収穫されます。腰をかがめ、一本ずつ引き抜く作業が続きます。収穫後は、冷たい水を使って大根を洗います。
「最初は楽しいんですけど、だんだん飽きとの戦いになります」そう話しながらも、手を止めることはありません。農家の心を悩ませるのが、市場の規格です。味が甘く、中身が真っ白でも、形が少し違うだけで規格外になります。規格外になった大根は、近所に配ったり、自分たちで食べたりしながら、無駄にしない方法を探します。その姿勢もまた、農家の日常の一部です。
大根の収穫と並行して、畑ではすでに次の命が育っています。「何かが終わると、すぐに次が始まる」それが三浦の農業です。冬の大根が終わる頃には、春のキャベツやブロッコリーが待っています。特にキャベツとブロッコリーは、時期をずらしながら常に植えられ、大根と並ぶ農園の主役として畑を彩ります。畑の奥には、まるでイタリアンレストランのような野菜たちが並びます。ルッコラ、ケール、コールラビ、エシャレット。さらに、新しい品種の小松菜や、のらぼう菜なども試験的に育てています。珍しい野菜を見つけては挑戦し、失敗と成功を繰り返しながら、農園の幅を広げています。
スイカの季節にはスイカの洋服、大根の季節には大根の洋服を着た愛犬のモナちゃんも、家族を応援する大切な存在です。夏にはスイカを育て、冬には大根を収穫し、春にはキャベツを植える。一つの収穫が終わると、すぐに次の作付けが始まります。農家の日常は、決して派手ではありませんが、確かな積み重ねに満ちています。一本の大根を手に取ったとき、その背後にある作業の積み重ねや、試行錯誤の時間に思いを向けてみてください。
「次はこれをやってみよう」「あれを植えたらどうなるだろう」。畑に立つと自然に湧いてくるそんな純粋な好奇心が、加藤農園のものづくりの原動力になっています。食べる人の顔を思い浮かべながら挑戦を重ねた結果、気がつけば年間100種類近い野菜が畑を彩るようになりました。季節ごとに姿を変えるそのラインナップには、驚きと楽しさが詰まっています。
そして、農園を支える大切な存在は、いとこの原田さんです。「どうしたらもっとおいしく味わってもらえるだろう」「珍しい野菜を身近に感じてもらうには」そんな思いから、原田さんは目を引くPOPを用意し、店頭に添えています。スーパーへの納品の時間を見計らって訪ねてくるお客様もいて、「この野菜はどう料理したらいいの?」と会話が弾むこともしばしば。畑と食卓をつなぐ頼もしい存在です。
加藤農園の野菜は、農協からの出荷をはじめ、ヨークマート久里浜店、直売所「須軽谷の里」などで手に取ることができます。土に向き合い、手間ひまを惜しまず育てられた一本一本には、作り手の気持ちが静かに宿っています。いつもの食卓に並べれば、きっとひと口ごとに季節の息づかいが伝わってくるはず。どうぞ、ご家庭でそのみずみずしいおいしさを味わってみてください。
取材日 2025/12/10
※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

Writerうみのとなり
ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

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