【横須賀】「M.シダータ」アトリエで生まれる唯一無二の革仕事

Release2025.09.04

Update2025.09.04

【横須賀】「M.シダータ」アトリエで生まれる唯一無二の革仕事

Release2025.09.04

Update2025.09.04

横須賀市平作の高台にある、自然に囲まれた静かなアトリエ。小道を上がった先にある白い箱型の建物の中では、虫や鳥たちの歌を聴きながら、「M.シダータ」の革職人・三堀唯史さん(愛称、以下シダータさん)がオリジナルの鞄や小物を製作しています。

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「どこにもないものを、自分の手でつくりたい」

幼い頃からものづくりや絵に注いでいた情熱は、いまも変わらずシダータさんの作品づくりの根底にあるようです。

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独学で生まれた原点的作品「風雅」

シダータさんが鞄づくりを始めたのは、30年も前のこと。愛用していた鞄が壊れたことをきっかけに、革を購入して自ら手を動かして最初のドクターバッグ「風雅」を製作したそうです。

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「鞄づくりは独学です。皮革の知識や扱い方は、当時知り合った先輩に教えていただきました。最初の作品をきっかけに、絵描きさんや音楽家の友人から注文が入るようになって、いつのまにか革職人の人生がスタートしました」

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型紙を作り、革を選び、金具を合わせる。ひと針ごとに時間を刻む手縫いの鞄の作業は3〜4日かかります。ドクターバッグに使用するのは、マズール社製(ベルギー)のルガトショルダー(渋革)で、牛の首元のしわを活かしたトラ目模様が特徴です。植物タンニンで丁寧になめされた革は、透明感と奥行きをもって語りかけてきます。

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そぎ落とすことで見えてくる、美しさの輪郭

シンプルなものを好み、機能に準じたデザインを取り入れながらも、ステッチの1本でさえも装飾を足すことには慎重なシダータさん。その根底には、先人たちの言葉への共鳴がありました。

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「ダ・ヴィンチは『シンプルさは究極の洗練である』と言い、ドイツ人建築家のルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエは建築標語に『少ないことはより豊かなことである』と掲げています。複雑さよりも削ぎ落した中に、本当に必要な形が見えてくるのだと思います」

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命あるものから生まれた、唯一無二の鞄

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シダータさんのデザインのアイディアは、日常のふとした瞬間にふってくるそうです。外を眺めているとき、歩きながら――。そんな自然な流れの中で湧き出すアイデアは、唯一無二の形になっていきます。

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ときには、畳んで立てかけていた傘を見て、その“たわみ”からバッグの形を見出すことも。そうして生まれた「フラワーバッグ」は、偶然と観察からの贈りものでした。バッグはファスナーを閉じれば、マルチポケットのバッグに、開いて広げればピクニックに最適な敷物になります。まさにアイディアから生まれた唯一無二の鞄です。

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「命あるものからいただいた皮革を使わせてもらう以上、お客さまに鞄を永く使ってもらいたい。これからも洗練された、どこにもないシンプルな鞄をつくっていきたいですね」

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人の手の中で、静かに語りかけるような美しさと存在感をもつ「M.シダータ」の鞄を、ぜひお手に取ってみませんか。独学で積み重ねてきた技術と、手間を惜しまない心。そのすべてが、鞄一つひとつに静かに息づいています。

取材日 2025/07/24

※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

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手のぬくもりが伝わる手縫いの一点ものだけでなく、強度の高いミシンでの製作も。

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鞄だけでなく、かぶっている帽子もなんと自作のもの。つくる対象は変われど、「手で形にすること」への想いはいつも同じです。

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「お土産に」取材陣に即興でつくってくださった革ブレスレット。アトリエや出張先で革工芸のワークショップを開くこともあるという。

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生きていたものから頂いたものだから破片でも大切に。そして捨てるときは「必ず、ありがとうって感謝を伝えてから捨てます」とシダータさん。

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「持ち道具」の担当者と知り合ったことをきっかけに、映画やドラマなどから作中に登場する革製品の製作依頼が来るように。

Writer小林有希

東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。

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