明治43年創業の老舗和菓子屋「精栄軒」は、江戸時代から貿易や造船業、商業で賑わっていた浦賀の地にあります。
一見すると伝統的な和菓子屋ですが、そのラインナップの中にはプリンやマドレーヌといった洋菓子も混じっています。
明治43年創業の老舗和菓子屋「精栄軒」は、江戸時代から貿易や造船業、商業で賑わっていた浦賀の地にあります。
一見すると伝統的な和菓子屋ですが、そのラインナップの中にはプリンやマドレーヌといった洋菓子も混じっています。
中でも特に人気なのが、創業当初から今もつくられ続けている「黒船サブレ」(130円・税込)です。浦賀の歴史を象徴するような黒船の形で、中央には外国の蒸気船の推進用外輪が型押しされています。
サブレのさくっとした食感に加え、バターの甘さが口の中に広がる素朴な味わい。小麦粉、卵、バター、砂糖といたってシンプルな配合は、開発以来一切変えていないのだとか。
「このサブレは創業者である曾祖父が、バターが出回り始めた当時の流行にあわせてつくったんだと思います。伝統的な和菓子を代々守っていくというよりも、その時代にあったもの、人々が求めるものを創作していくのが、浦賀の気質なんですよね」と四代目の水谷さんは語ります。
浦賀は鎖国まで西洋文化にいち早く触れられる流通の中心地であり、流行の発信地でもありました。だからこそ浦賀には、“新しいものが出たら、まずは試してみる”という挑戦心が根付いたようです。
精栄軒も例に漏れず、水谷さんは先代から精栄軒が横須賀市内でいち早く生クリームを使った店だと聞いていたそうです。
そんな浦賀の気質は、脈々と現代にも受け継がれています。
「代々の店主たちのように、私は私で新しい材料を入れつつ、ちょっと驚きのあるような創作菓子をつくりたいと考えています。一方で、『黒船サブレ』のようにお客さまに永く愛される味となれば、そのまま残していきたいですね」
そしてサブレに視線を落とすと、水谷さんはぽつりと「これはやっぱり変えられない」と呟いたのでした。
かつての浦賀の風景に想いを馳せながら、明治そのまま当時の味わいをぜひお楽しみください。
取材日 2025/1/17
※掲載されている商品、価格、情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。
Information
精栄軒
住所 〒239-0824 神奈川県横須賀市西浦賀1-6-16
電話番号 046-841-0123
営業時間 10:00~16:00
定休日 月・木曜
アクセス 浦賀丘バス停より徒歩9分
URL https://www.facebook.com/seieiken/?locale=ja_JP
Writer小林有希
東京在住フリーライター/Web編集。2016年にアパレル企画兼バイヤーを辞めて、ライターに。 紙、WEB問わず企業PR、ファッション、アート、地域、建築、教育、働き方など多分野で執筆中。
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