【横須賀】「美しい刃は、人生を変える」菊秀刃物店 創業100年の包丁

Release2025.08.10

Update2025.08.26

【横須賀】「美しい刃は、人生を変える」菊秀刃物店 創業100年の包丁

Release2025.08.10

Update2025.08.26

「美しい刃は、人生を変える」横須賀・三笠ビル商店街の「菊秀刃物店」で四代目店主・髙橋さんが語る言葉です。大正時代創業の老舗専門店で扱う67層構造のダマスカス包丁は、まさに機能する芸術品。元有名毛髪業店長という異色の経歴を持つ店主が、一本の包丁が料理と暮らしの質を変える体験を丁寧に伝えています。

包丁の形は「叩く」から「切る」へ

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店内には、用途も形も異なる包丁がずらり。

思わず見とれてしまう美しさには、機能美と歴史が凝縮されています。

日本の伝統的な包丁は、刃がまっすぐで、まな板に包丁の全体が当たる「叩く」動作が基本でした。例えば、ネギや大根を切る際は、包丁全体でトントンと叩きつけるように使われていたそうです。

しかし、時代とともに食材や料理スタイルが変化。魚や肉を自宅で扱うようになったことで、包丁の形も変わっていきます。

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「先が尖ってきたのは、魚や肉をさばくようになってからですね」と教えてくれるのは、店主・髙橋さん。西洋のナイフ文化が日本に入ってきたことも、大きな影響を与えたと話します。

「たとえば“牛刀”という包丁は、刃全体がゆるやかにカーブしていて、スライドさせて“押し切り”や“引き切り”するように作られているんですよ」

和包丁の「叩く」文化と、西洋ナイフの「滑らせて切る」文化が合わさり、現代の使いやすく多機能な包丁の進化につながっています。

見惚れるほど美しい。職人技が光る模様包丁

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刃に波のような模様が浮かび上がっている包丁は「ダマスカス包丁」と呼ばれるもの。

思わず見とれてしまうほど美しく、芸術品のようです。

この模様は、異なる種類の軟鉄を片側33層ずつ、計67層も重ねて作られています。さらに焼き入れをしたあと、特別な加工を施すことで独特の模様が現れます。

一般的な包丁が三層構造なのに対し、ダマスカス包丁はその何倍もの手間と技術がかけられた、職人技の集大成。

形や大きさ、模様のバリエーションも豊富で、見る角度によっても表情が変わります。使うほどに愛着が増す“機能する芸術品”です。

大正時代から続く「菊秀刃物店」

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横須賀中央駅から徒歩5分のところ、三笠ビル商店街に大正時代から続く老舗刃物店「菊秀刃物店」があります。包丁をはじめ、はさみやのみなど、千点以上の様々な刃物を扱う昔ながらの専門店として地元の人たちに親しまれています。

現在は四代目・髙橋利也さんが店を受け継ぎ、店頭に立っています。

幼い頃から祖父に刃物研ぎを教わり、小学生で鉋(かんな)を研いでいたという髙橋さんにとって、刃物はまさに生活の一部だったとか。

「いつか継ぐだろうなと思っていました」と穏やかに話します。

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髙橋さんは若い頃に美容師免許を取得し、その後は有名毛髪業で長年店長として活躍。

店舗運営や売上管理、接客のノウハウを現場で培いました。こうした社会経験が、今の菊秀刃物店の経営や接客にも活かされていると言います。

「僕、口が上手いんですよ!」と、冗談まじりに語る髙橋さん。

包丁の特徴や手入れ方法を分かりやすく伝えてくれるその語り口に、気づけば包丁の奥深い世界へとぐっと惹きこまれていました。

時を超えて愛される「一本」との出会い

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店内には、古くから大切に受け継がれてきた品々が静かに佇んでいます。

一歩足を踏み入れると、まるで時間が止まったかのような、昔ながらの空間が広がります。レトロな看板や壁紙は、この場所が歩んできた長い歴史を感じます。

しかし、時代の流れとともに、多くの変化がありました。「今では、こうした商品を作る職人がいなくなり、ここまでの品質のものはもう作れません」

「包丁が変わると、人生が変わる」

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「その人にとっての一本を、納得して手に取ってもらいたい」

老舗刃物店の店主として、ただ“モノを売る”のではなく、お客様のライフスタイルや価値観に寄り添った一本を提案することを大切にしています。

「良い包丁を持つと、不思議と料理に向き合う気持ちが変わるんです。食材の選び方が変わり、キッチンの使い方が変わり、盛り付けにもこだわりが生まれる。やがて、それがその人の“暮らし”や“人生の質”さえも変えていくんですよ」

一丁の包丁がきっかけで、暮らしが豊かになる。そんな体験を提供できるのも、髙橋さんの長年の経験と、「お客様にとっての本当に良い一本」を見極める誠実な接客があるからこそ。

古くから続く刃物文化の真髄が、今もなお、この店に息づいています。

菊秀刃物店の商品はオンラインショップでも購入できます。高級包丁や包丁1本無料研ぎサービスは横須賀市ふるさと納税返礼品です。

取材日 2025/6/18

※掲載されている商品・情報は取材時点のものであり、変更される場合がありますのでご了承ください。

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全て手作りのミノ。「50万円出す」と言われても店主の父親が売らなかったという逸品です。

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一際大きな宮大工用のミノもあります。DIYをする外国人のお客様に人気です。

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力を入れなくても、スッと切れる布用バサミの切れ味に感動します。

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スマホゲーム『アズールレーン』のコラボをきっかけに、感謝の気持ちでグッズを飾ったところ、ファンが訪れる聖地としても人気に。

Writerうみのとなり

ライター歴5年 「横須賀っていいな」「行きたいな、住みたいな」と思ってもらえる情報を発信しています。 地元の美しい自然・歴史・地域のあたたかさと魅力を伝えたい!Yahoo!ニュースライター 500件以上取材実績あり。地域クリエイター月間MVA2024年11月、7月、2023年7月連続受賞。

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